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2000年(平成12年)

平成11年神審第89号
    件名
プレジャーボートフォレスト−アイランド汚濁防止フェンス損傷事件

    事件区分
施設等損傷事件
    言渡年月日
平成12年2月15日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

西田克史、工藤民雄、米原健一
    理事官
橋本學

    受審人
A 職名:フォレスト−アイランド船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
汚濁防止フェンス及び浮体に切損

    原因
水路調査不十分

    主文
本件汚濁防止フェンス損傷は、水路調査が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年2月22日19時35分
神戸港第6区
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートフォレスト−アイランド
全長 12.4メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 169キロワット
3 事実の経過
フォレスト−アイランド(以下「フ号」という。)は、船体中央部に操縦席を設けたFRP製プレジャーボートで、A受審人が単独で乗り組み、同人の妻、フ号の所有者及びその息子の3人を乗せ、めばる釣りの目的で、船首尾2.4メートルの等喫水をもって、平成10年2月22日14時00分兵庫県尼崎西宮芦屋港内の定係地である今津パワーボートセンター専用桟橋を発し、神戸港第4区のポートアイランド南西端付近の釣場に至って日没過ぎまで釣りを行い、19時15分神戸港第1防波堤東灯台(以下、航路標識の名称は「神戸港」を省略する。)から107度(真方位、以下同じ。)750メートルの地点を発進して帰途についた。

ところで、神戸港六甲アイランド地先水域においては、同年1月8日から六甲アイランド南埋立工事区域が設定され、4月1日までの間埋立工事が行われていた。
その区域は、神戸港第5区及び同第6区にまたがり、第6防波堤灯台から082度3,370メートルの第7防波堤上の地点を北東端とし、同地点から172度1,550メートル、以下順次267度1,700メートル、330度1,500メートルの第7防波堤上の地点が北西端にあたり、各地点を順に結んだ線と同防波堤で囲まれる逆台形状を成し、周縁には多数の標識が設置されているとともに、浮体を有する汚濁防止フェンスが張り巡らされていた。
標識は、3種類あって、工事区域の北東及び北西両端に白色標識灯(灯質3秒毎に白色1閃光、光達距離7キロメートル、灯高6.6メートル)が、南東及び南西両端と前示各地点の中間に大型黄色やぐら形灯浮標(灯質3秒毎に黄色1閃光、光達距離11キロメートル、灯高4.8メートル)が、更にこれらの標識間に等間隔で2個の黄色やぐら形灯浮標(灯質3秒毎に黄色1閃光、光達距離7.5キロメートル、灯高3.4メートル)が、それぞれ設置されていた。

このような工事区域や標識などの詳細は、神戸港長公示、五管区水路通報及び航泊禁止区域の設定についてと題するパンフレット等で一般に周知されていた。
A受審人は、海技免状の取得以来3年近くにわたり、知人であるフ号所有者から同船の運航を任せられ、度々所有者夫妻を乗せて専ら昼間に操船し、定係地から明石海峡に至って釣りを行っていた。そして、同人は、同年2月になって六甲アイランド南埋立工事区域の東側近くを数回通航したとき、黄色の灯浮標を見かけたが、これまで何ら支障なく航行できたことから、水路調査をしなくても大丈夫と思い、発航に先立ち、今津パワーボートセンターの管理事務所に赴き、航行海域付近における工事関係の資料を入手するなど水路調査を十分に行うことなく、同工事区域が設定されてその周縁に多数の標識や汚濁防止フェンスが存在することも、これらの標識が夜間点灯することも知らなかった。

こうして、A受審人は、釣場発進と同時に所定の灯火を表示し、機関を半速力前進にかけ、操縦席に腰を掛けて操舵にあたり、折から強い北東風による波しぶきを受ける中、前窓ガラスに取り付けたワイパーを高速で作動させ、間もなく波浪観測塔灯の灯火を認め、これを船首少し右に見ながらポートアイランド南方沖合を東行した。
19時31分半A受審人は、波浪観測塔灯の至近に至り、第7防波堤東灯台から210度1.9海里の地点に達したとき、同灯台の緑灯を視認し、これに船首を向けて針路を030度に定め、強い北東風により、10度左方に圧流されながら、引き続き半速力前進のまま12.5ノットの対地速力で手動操舵により進行した。
19時33分半A受審人は、正船首700メートルに六甲アイランド南埋立工事区域南東端の灯浮標やその周りに多数の標識の明かりを視認でき、その後同工事区域に向かって接近する状況であったが、水路調査を十分に行っていなかったので、このことに気付かず、第7防波堤東灯台の緑灯に注目しながら操船に専念して続航した。

19時35分A受審人は、第7防波堤東灯台から216度2,150メートルの地点において、突然船体に衝撃を感じ、フ号は、その船首が036度に向いたとき、原速力のまま、六甲アイランド南埋立工事区域南東端付近に乗り入れた。
当時、天候は晴れで風力6の北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
その結果、汚濁防止フェンス及び浮体に切損を生じたが、のち損傷部分は取り替えられた。一方、フ号は、舵と推進器の間に浮体部が挟まって航行不能となり、翌々24日クレーン船の来援を得て離脱した。


(原因)
本件汚濁防止フェンス損傷は、夜間、神戸港六甲アイランド南埋立工事区域付近を通航するにあたり、水路調査が不十分で、北東風により圧流されながら同工事区域に乗り入れたことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、神戸港六甲アイランド南埋立工事区域付近を通航するつもりで、尼崎西宮芦屋港を発航する場合、航行海域近くに黄色の灯浮標が設置されているのを知っていたものの、その詳細については知らなかったのであるから、発航に先立ち、工事関係の資料を入手するなど水路調査を十分に行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、これまで何ら支障なく航行できたことから、水路調査をしなくても大丈夫と思い、発航に先立ち、工事関係の資料を入手するなど水路調査を十分に行わなかった職務上の過失により、夜間、釣場からの帰途、北東風により圧流されながら進行し、六甲アイランド南埋立工事区域に向かって接近していることに気付かず、同工事区域に乗り入れ、汚濁防止フェンス及び浮体に切損を生じさせるに至った。

以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

よって主文のとおり裁決する。






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