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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成11年10月2日23時13分 宮城県牡鹿半島南西岸沖 2 船舶の要目 船種船名
プレジャーボート広進丸 総トン数 17トン 登録長 14.15メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力
470キロワット 3 事実の経過 広進丸は、FRP製プレジャーボートで、A受審人が単独で乗り組み、友人5人を乗せ、船首0.7メートル船尾1.5メートルの喫水をもって、いか釣り遊漁の目的で、平成11年10月2日18時00分定係地の宮城県宮城郡七ヶ浜町要害漁港を発し、同県気仙沼港南東10海里沖合のいか釣り場に向かった。 発航後、A受審人は、石巻湾を東航し、田代島及び網地島の東側牡鹿半島との間の瀬戸(以下、単に「瀬戸」という。)を経て目的の釣り場に至り、探索を行ったものの、まったく魚影の反応を得ることができなかった。そこで、21時00分遊漁を取り止めて帰途に就き、往路と同じく瀬戸を経由することにした。 ところで、同瀬戸は、田代島北部、同島の対岸及び大原湾の各水域に養殖施設の設置区域が設けられており、そのうち田代島対岸の兎島付近水域には、二鬼城埼灯台から075度(真方位、以下同じ。)1,250メートル、061度1,840メートル、082度2,480メートル、086度2,340メートル、088度2,440メートル及び099度2,270メートルの各地点を順次結んだ線によって囲まれた区域にかき養殖施設(以下「兎島沖養殖施設」という。)が設置され、その要所に夜間識別できる標識として黄色閃光を発する乾電池式灯火付き浮標が取り付けられていたものの、瀬戸北口が狭められたところであった。 そこで、A受審人は、瀬戸北口にあたる兎島沖養殖施設北西端の標識灯を替わったところで、田代島北側水域に設置されたかき養殖施設を十分に離して航行するためにいったん針路を北東寄りに採ることにした。 こうして、22時48分A受審人は、瀬戸南口にあたる、金華山灯台から225度3.1海里の地点に達したところで、針路を314度に定め、機関を半速力前進にかけて15.0ノットの速力で手動操舵により瀬戸に向け進行し、さらに23時05分半仁斗田港防波堤灯台から097度2.1海里の地点で、305度の針路に転じて続航した。 ところが、23時12分少し前A受審人は、二鬼城埼灯台から102度1.2海里の地点に達し、兎島沖養殖施設が設置されて可航幅が一層狭められた瀬戸北口に差し掛かったが、往路で瀬戸を容易に通航できたので、そのまま復路も同様に瀬戸を通航することができるものと思い、レーダーなどにより船位の確認を十分に行わなかったので、まもなく兎島沖養殖施設南端付近の標識灯に並航したとき、同標識灯を同施設西端のもので予定転針地点に達したものと見誤り、そのまま田代島北側区域に設置されたかき養殖施設を十分に離すつもりで北東寄りに向かう317度の針路に転じた。その後、兎島沖養殖施設に向かっていることに気付かないまま進行中、同時13分少し前船首方至近に同施設西端の標識灯を認めてかき養殖施設に乗り入れる状況であることに気付き、急いで機関の回転数を下げたものの間に合わず、23時13分二鬼城埼灯台から102度1,750メートルの地点において、兎島沖養殖施設南西部分に原針路、原速力のまま乗り入れた。 当時、天候は晴で風力2の北西風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。 その結果、船体には損傷を生じなかったものの、かき養殖施設に損傷を生じた。
(原因) 本件かき養殖施設損傷は、夜間、網地島及び田代島の東側牡鹿半島との間のかき養殖施設が設置された狭い瀬戸を経て帰航する際、船位の確認が不十分で、瀬戸北口の予定転針地点の手前で転針して兎島沖養殖施設に向かって進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、網地島及び田代島の各島と牡鹿半島との間の狭い瀬戸を経て帰航する場合、瀬戸の北口付近に兎島養殖施設が設置されていることを知っていたのであるから、同施設に乗り入れることのないよう、レーダーなどにより船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかし、同人は、往航と同様に容易に通航することができるものと思い、レーダーなどにより船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、瀬戸北口付近で兎島沖養殖施設の標識灯のうちの予定転針目標にしていた標識灯を見誤ったまま転針して、同施設への乗り入れを招き、かき養殖網を損傷させるに至った。 |