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2000年(平成12年)

平成12年神審第63号
    件名
プレジャーボート秀丸定置網損傷事件(簡易)

    事件区分
施設等損傷事件
    言渡年月日
平成12年9月29日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

審判官:阿部能正
    理事官
蓮池力

    受審人
A 職名:秀丸船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
定置網の網及び綱の一部にそれぞれ損傷

    原因
針路選定適切

    主文
本件定置網損傷は、針路の選定が適切でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年11月28日10時10分
大阪府深日港沖合
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボート秀丸
登録長 10.53メートル
全長 11.80メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 117キロワット
3 事実の経過
秀丸は、FRP製プレジャーボートで、A受審人が1人で乗り組み、友人2人を乗せ、魚釣りの目的で、船首0.3メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、平成10年11月28日07時00分大阪港大阪区第3区の船着場を発し、大阪湾南部の地ノ島周辺の釣り場に向かい、同湾を南下して09時30分同島に接近したものの、北寄りの風波が強いことから、魚釣りができず、帰航することとなった。
A受審人は、風波を避けて大阪府南西部沿岸を北上することに決め、09時35分地ノ島灯台から287度(真方位、以下同じ。)1.8海里の地点を発進して、同沿岸に向かい、同時50分少し過ぎ同灯台から041度1,280メートルの地点において、針路を061度に定め、機関を半速力前進にかけ、10.0ノット(対地速力、以下同じ。)とし、操舵室右舷側の操舵輪後方に立って操舵に当たって進行した。

10時04分半わずか前A受審人は、深日港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から280度3,040メートルの地点に達したとき、針路を深日港北沖合に向かう078度に転じて続航したところ、同時07分前方300メートルばかりのところに、定置網の縁辺に設置された数個の簡易標識灯を認めた。
ところで、定置網は、大阪府谷川漁業協同組合が設置した定置網で、西防波堤灯台から301度1,950メートルの地点を基点として、同地点から244度方向に200メートル、335度方向に60メートルの辺で囲まれる長方形の水域にある身網と、基点から244度100メートルにある身網から157度方向へ270メートル、ついで218度方向へ75メートルの長さで曲折して延びる垣網とがあって、それぞれの網の縁辺を表示するために黄色及びオレンジ色の閃光を発する簡易標識灯がほぼ100メートル間隔で設置されていた。また、各網には多数の浮子が付され、ところどころに黒旗が立てられていた。

A受審人は、風波の影響が比較的少ない定置網南端と陸岸との間を通航する針路に転じることとしたものの、同針路は定置網に著しく接近しなければならず、簡易標識灯や浮子を見落として網内に進入するおそれがあったが、減速して航行すれば大丈夫と思い、定置網を十分に離してその北側に迂回する安全な針路を選定することなく、10時07分半西防波堤灯台から290度2,170メートルの地点に達したとき、速力を微速力の5.0ノットに減じたのち、針路を099度に転じて続航したところ、垣網の南側に向首することとなったが、これに気付かず、同時10分わずか前前方間近に浮子を認めたが、どうするいとまもなく、秀丸は、10時10分西防波堤灯台から293度1,800メートルの地点において、原針路、原速力のまま、定置網に乗り入れた。
当時、天候は曇で風力4の北西風が吹き、潮候は上げ潮の中央期であった。

その結果、定置網の網及び綱の一部にそれぞれ損傷を生じ、秀丸は、船体に損傷を生じなかったものの、推進器に網が絡まったことから航行不能となり、翌29日谷川漁業協同組合の手により網を切断して同網外に脱出し、のち同組合の船によって谷川漁港に曳航された。

(原因)
本件定置網損傷は、大阪府深日港沖合を東行中、針路の選定が不適切で、同網内に進入したことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、大阪府深日港沖合を東行中、前方近距離に、定置網の縁辺に設置された数個の簡易標識灯を認めた場合、同標識灯や浮子を見落として同網内に進入することのないよう、定置網を十分に離してその北側に迂回する安全な針路を選定すべき注意義務があった。しかるに、同人は、減速して航行すれば大丈夫と思い、安全な針路を選定しなかった職務上の過失により、定置網に著しく接近する針路で進行して同網内に進入し、定置網の網及び綱の一部にそれぞれ損傷を生じさせるに至った。






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