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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成11年11月13日05時40分 北海道白老港南西方沖合 2 船舶の要目 船種船名
貨物船大東丸 総トン数 497トン 登録長 70.85メートル 機関の種類 ディーゼル機関 出力
735キロワット 3 事実の経過 大東丸は、主として福岡県刈田港から国内各港にライムストーンを輸送している船尾船橋型の鋼製貨物船で、A受審人ほか4人が乗り組み、川砂1,520トンを載せ、荒天待機をしたのち、船首3.7メートル船尾4.7メートルの喫水をもって、平成11年11月13日05時20分北海道白老港を発し、千葉県木更津港に向かった。 ところで、白老港は、同港北東部の陸岸から南東方に約200メートル延びたのち南西方に屈曲して約1,000メートル延びる東防波堤とその突端の東方約100メートルのところから更に南西方に約450メートル延びる沖防波堤の南西端と、東防波堤の突端から北西方約250メートルのところから北西方に約200メートル延びる沖防波堤の南東端との間を同港入口とし、8月1日から12月15日までの期間、東側の沖防波堤南西端の南西方約1,100メートルところに、南西方に延びる長さ約250メートル、幅約80メートルの本網とこれに直角に接続して陸岸側に延びる長さ約1,300メートルの手網によって構成された定置網が設置されていた。 A受審人は、白老港に入航した経験があったが、そのときは定置網が設置されていなかったため、定置網のブイなどを視認しておらず、12日同港に入航するとき、レーダーを監視していたが、夜間で雨が降っており、レーダーに定置網の反応がなく、その存在を知らなかった。 A受審人は、荒天待機中、木更津港に向かう航海が荒天航海とならないよう、針路をいつものように東防波堤の東側の沖防波堤の南西端を替わしてすぐ尻屋埼に向く針路とせず、陸岸寄りの針路とすることとしたが、定置網に向首進行することのないよう、以前から入手していた定置網の設置範囲を記入した航海図に当たるなどして定置網の設置状況を十分に調査しなかった。 離岸時からA受審人は、1人で操舵、操船に当たり、05時25分右舷錨を揚げたのち、白老港東防波堤に沿って南下し、同時36分半白老港東防波堤突端赤灯(以下「東防波堤突端赤灯」という。)から248度(真方位、以下同じ。)180メートルの地点に達したとき、針路を岸線を離す216度に定め、機関を全速力前進にかけ、11.0ノットの対地速力で進行した。 定針したときA受審人は、東防波堤突端赤灯から268度1,460メートルの海岸を基点とし、南東方沖合に向け設置された定置網の手網に向首したが、このことに気付かないまま続航した。 A受審人は、同針路、全速力で進行中、05時40分少し前船首至近に白色の浮きを多数視認し、直ちに左舵一杯としたが間に合わず、05時40分東防波堤突端赤灯から220度1,260メートルの地点において、大東丸は、原針路、全速力のまま、定置網の手網を乗り切り、更に左転して定置網の本網内に乗り入れて停止した。 当時、天候は曇で風力1の南西風が吹き、潮候は上げ潮の末期で、日出時は06時23分であった。 その結果、大東丸は、損傷がなかったが、推進器に絡網して航行不能となり、のち引船によって定置網の外に引き出されて白老港に引き付けられ、定置網は、本網、手網及び付属漁具に損傷を生じた。
(原因) 本件定置網損傷は、夜間、白老港から木更津港に向け陸岸寄りに航行する際、水路調査が不十分で、白老港の南西方陸岸から南東方沖合に向け設置された定置網の手網に向首進行したことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、夜間、白老港から木更津港に向け陸岸寄りに航行する場合、定置網に向首進行することのないよう、以前から入手していた定置網の設置範囲を記入した航海図に当たるなどして定置網の設置状況を十分に調査すべき注意義務があった。しかるに、同人は、以前から入手していた定置網の設置範囲を記入した航海図に当たるなどして定置網の設置状況を十分に調査しなかった職務上の過失により、定置網の存在に気付かず、定置網の手網に向首進行してこれを乗り切り、更に左転して本網内に乗り入れ、手網、本網及び付属漁具に損傷を生じさせるに至った。 |