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2000年(平成12年)

平成11年横審第140号
    件名
油送船第二栄福丸のり養殖施設損傷事件

    事件区分
施設等損傷事件
    言渡年月日
平成12年4月26日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

猪俣貞稔、勝又三郎、河本和夫
    理事官
藤江哲三

    受審人
A 職名:第二栄福丸船長 海技免状:五級海技士(航海)
    指定海難関係人

    損害
のり養殖施設を損傷

    原因
船位確認不十分

    主文
本件のり養殖施設損傷は、船位の確認が不十分で、同養殖施設に乗り入れたことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年1月21日05時20分
伊勢湾師崎水道
2 船舶の要目
船種船名 油送船第二栄福丸
総トン数 110トン
全長 36.48メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 272キロワット
3 事実の経過
第二栄福丸は、専ら伊勢湾内でガソリン、灯油、軽油等の運搬に従事する鋼製油送船で、A受審人ほか2人が乗り組み、ガソリン300キロリットルを載せ、船首1.8メートル船尾2.4メートルの喫水をもって、平成10年1月21日02時00分名古屋港を発し、三河港に向かった。
A受審人は、発航操船に引き続き在橋し、機関長と甲板長を適宜交替で操舵に当たらせて知多半島沿いに南下し、04時45分羽島灯標の西方2海里ばかりのところで、自ら操舵操船に当たり、甲板長を船首見張りに就け、適宜作動中のレーダーを見ながら師崎水道に向かい、同時58分羽島灯標から180度(真方位、以下同じ。)680メートルの地点において、日間賀島と築見島の間の水路を通航することとし、針路を063度に定めたところ、右舷前方1海里のところに師崎水道を北上する第三船を認め、これが前路を航過するのを待つつもりで、機関を半速力前進として5.0ノットの対地速力で進行した。

ところで、日間賀島周辺には、距岸1,000メートルにわたってのり養殖漁業が営まれており、師崎水道東側にあっては、下瀬礁西方A灯浮標(以下「A灯浮標」という。)及び同B灯浮標付近を同島沖側境界とするような状況でのり養殖施設が設置され、A受審人は、平素付近水域をしばしば通航していたので、このことについて十分承知していた。
05時06分A受審人は、下瀬礁灯標から216度1,020メートルの地点に達したとき、第三船がいまだ自船の船首方向を替わらず、衝突のおそれがあったので、いったん左転して予定針路から離れ、同船と同航する態勢として機関を微速力前進に減じ、針路を012度として2.0ノットの速力で続航した。
A受審人は、第三船とほぼ並航して進行するうち、A灯浮標付近の日間賀島南西方ののり養殖施設に接近する状況となり、05時12分下瀬礁灯標から228度730メートルの地点で、第三船が自船の船首を航過したのを見て、第三船の船尾に向けて右転し、予定針路に戻すこととしたが、予定針路線からの偏位は大したことあるまいと思い、レーダーを活用するなり、付近の航路標識によるなどしてA灯浮標から遠ざかるよう、船位の確認を十分に行わなかったので、のり養殖施設のある水域に接近していることに気付かないまま、針路を090度に転じたところ、操業中の漁船の灯火を右舷前方間近に認め、同時16分左転してこれを避け、次いで同時19分同船を替わしたところで再度090度の針路にしたとき、右舷船首至近にA灯浮標の灯火を認め、同養殖施設に近づいていることに初めて気付き、同時20分少し前、急いで機関停止としたが、及ばず、05時20分下瀬礁灯標から207度260メートルの地点において、船首を090度に向けたまま、原速力で、のり養殖施設に乗り入れた。
当時、天候は晴で風力1の北北西風が吹き、潮候は上げ潮の初期であった。
この結果、第二栄福丸に損傷はなかったものの、のり網、ロープなどをプロペラに絡ませて航行不能となり、のち集まって来た漁船数隻により、乗り入れ場所から引き出され、プロペラに絡んだ網、ロープなどを解かれたが、のり養殖施設に損傷を与えた。


(原因)
本件のり養殖施設損傷は、師崎水道を西方から日間賀島南側水路に向けて横断するに当たり、同水道を北上する第三船を避けるために予定針路から離れてのり養殖施設のある日間賀島南西側水域に接近した後、予定針路に戻す際、船位の確認が不十分で、同水域に設置されていたのり養殖施設に乗り入れたことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、師崎水道を西方から日間賀島南側水路に向けて横断するに当たり、同水道を北上する第三船を避けるために予定針路から離れて、のり養殖施設がある日間賀島南西側水域に接近した後、予定針路に戻す場合、レーダーを活用するなり、付近の航路標識によるなどして、同施設の境界付近にあるA灯浮標から遠ざかるよう、船位の確認を十分に行うべき注意義務があった。しかしながら、同人は、予定針路線からの偏位は大したことあるまいと思い、船位の確認を十分に行わなかった職務上の過失により、第三船を避けるつもりで同船とほぼ並航して進行するうち、A灯浮標付近の日間賀島南西方にあるのり養殖施設に接近する状況となったことに気付かないまま、同船が替わった後、予定針路に戻して進行し、のり養殖施設に乗り入れ、自船はのり網、ロープなどをプロペラに絡ませて航行不能となり、のり養殖施設に損傷を与えるに至った。
以上のA受審人の所為に対しては、海難審判法第4条第2項の規定により、同法第5条第1項第3号を適用して同人を戒告する。


よって主文のとおり裁決する。






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