日本財団 図書館




2000年(平成12年)

平成11年神審第11号
    件名
プレジャーボートアンドロメダ運航阻害事件(簡易)

    事件区分
運航阻害事件
    言渡年月日
平成12年3月16日

    審判庁区分
地方海難審判庁
神戸地方海難審判庁

須貝壽榮
    理事官
野村昌志

    受審人
A 職名:アンドロメダ船長 海技免状:四級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
なし

    原因
潮流の調査不十分及び予備燃料タンクの油量確認不十分

    主文
本件運航阻害は、潮流の調査及び予備燃料タンクの油量確認がいずれも不十分であったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。
適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成10年7月24日22時20分
神戸港沖合
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートアンドロメダ
全長 5.74メートル
機関の種類 電気点火機関
出力 29キロワット
3 事実の経過
アンドロメダは、船体中央部にマスト1本を有する船外機付きFRP製プレジャーヨットで、船体後部に配置したコックピットの両舷側最後部に、容量40リットルの燃料タンクが1個ずつ設置されていた。
燃料タンクは、ステンレス製で、縦500、横350、高さ250各ミリメートルの直方体をなし、両タンクを連結する配管は無く、いずれか一方のタンクの底部取出弁に接続した1本の燃料ホースにより、混合ガソリンの燃料を船外機に供給するようになっており、上部に給油用キャップが、船首尾線に面した側部にはビニール製の油面計がそれぞれ取り付けられていた。

A受審人は、平成9年7月アンドロメダを取得後、所有者名義及び定係港の変更手続きをしないまま、神戸港西部の須磨ヨットハーバーを係留地に定め、余暇の折、その付近の大阪湾において、専ら機走のみでクルージングを行っており、風潮流の影響が少なければ、燃料タンク1個分の燃料により、機関を12.0ノットの全速力前進にかけたまま、ほぼ1時間半の航行が可能であるが、船首方から風潮流を受けると、速力が大幅に低下することがあるのを知っていた。
また、A受審人は、燃料タンクは左舷を常用タンク、右舷を予備タンクとし、まれに大阪港まで遠出する場合には予備タンクの燃料をも使用するものの、平素、短時間のクルージングを終えて係留地に戻ると、次航に備えて最寄りの給油所から燃料を購入し、常用タンクにほぼ一杯になるまで補給するようにしていた。

同10年7月24日18時30分A受審人は、自宅からアンドロメダに到着し、同夜、明石海峡北浜の大蔵海岸において打ち上げられる花火を見物するため、係留地から同海岸沖合まで機走により往復することとし、常用タンクには数日前に補給した燃料がほぼ一杯になっていることを確かめ、発航準備に取り掛かった。
このとき、A受審人は、備付けの潮汐表を見れば、明石海峡では、同日20時39分が西流の最盛期で流速6.7ノットに達することが分かり、花火見物を終えて帰途に就くころ、強い逆潮を受けて速力の大幅な低下を招き、係留地に帰着するまでには通常より燃料消費量が多くなると予想できたが、同海峡の潮流は強くないと思い込み、潮流の調査を行わなかった。
そのため、A受審人は、常用タンクの燃料とは別に、予備タンクにも十分な燃料を保持する必要があることに思い及ばず、単に航程が往復で13海里ばかりであるから、常用タンクの燃料で足りるうえ、予備タンクにもまだかなり量が残っているはずだから大丈夫と思い、同タンクの油面計を入念に見るとか、給油口からタンク内部を覗くとかして、その油量確認を行わなかったので、残量が皆無であることに気付かなかった。

こうして、アンドロメダは、A受審人が単独で乗り組み、知人1人を乗せ、船首尾とも0.30メートルの喫水をもって、同日19時30分須磨ヨットハーバーを発し、陸岸沿いを西行して20時15分大蔵海岸沖合に至り、船体があまり移動しないよう適宜機関を使用しながら花火見物を行い、同時40分明石港東外防波堤灯台から096度(真方位、以下同じ。)1,500メートルの地点を発進して帰途に就いた。
A受審人は、操縦ハンドルを中央位置に固定した状態として船外機を12.0ノットの全速力前進にかけ、舵柄により連動する2枚舵を操作しながら明石海峡の北側を東行し始めたが、折からの強い西流に加え東寄りの風の影響で速力が上がらず、なかなか明石海峡大橋を通過できないでいたので、淡路島側に近寄ることとした。そして、船上に波しぶきが打ち上がらないように減速して明石海峡航路を横断した後、航路の南側境界線沿いにその少し外側を航行し、やがて、航路東口付近に至り、針路を北東方に転じて続航した。

22時07分半A受審人は、大蔵海岸沖合から平均3.7ノットの対地速力で、かつ、当初予定の航程よりも2海里余り多く航行し、平磯灯標から221度300メートルの地点に達したとき、針路を067度に定め、船外機を全速力前進にかけ、潮流の最盛期が過ぎ、本流から外れて微弱となった西流に抗し、東北東風を船首に受けながら10.0ノットの対地速力で陸岸沿いを東行中、22時20分アンドロメダは、神戸港外須磨海釣公園塔灯から247度300メートルの地点において、目的地まであと1.5海里のところで燃料切れを起こし、船外機が停止した。
当時、天候は曇で風力4の東北東風が吹き、潮候は下げ潮の中央期であった。
A受審人は、直ちに常用タンクを点検したところ、燃料切れであることが判明し、予備タンクに燃料ホースを付け替えたが、残油が皆無で、船外機を起動させることができなかった。そして、甲板下から帆走用具を取り出して帆走を試みたが、風上に切り上がって航行することができないでいるうち、船体が次第に南方に流され、陸岸から遠ざかるので不安を感じ、23時25分神戸海上保安部に携帯電話で救助を求めた。

翌25日00時50分アンドロメダは、須磨ヨットハーバーの南方5海里付近の大阪湾を漂流中、来援した巡視艇から燃料油の供給を受け、その後、自力で同ヨットハーバーに帰航した。

(原因)
本件運航阻害は、神戸港西部の須磨ヨットハーバーから明石海峡北浜の大蔵海岸沖合までを往復するための発航準備にあたり、同海峡における潮流の調査及び予備燃料タンクの油量確認がいずれも不十分で、帰航中、燃料切れを起こしたことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、神戸港西部の須磨ヨットハーバーから明石海峡北浜の大蔵海岸沖合までを往復するための発航準備に取り掛かる場合、船首方から風潮流を受けると、速力が大幅に低下することがあるのを知っていたのであるから、燃料切れとならないよう、常用タンクの燃料とは別に、予備タンクの油量確認を行うべき注意義務があった。しかるに、同人は、単に航程が往復で13海里ばかりであるから、常用タンクの燃料で足りるうえ、予備タンクにもまだかなり量が残っているはずだから大丈夫と思い、予備タンクの油量確認を行わなかった職務上の過失により、同タンクの残量が皆無であることに気付かず、帰航中に燃料切れとなり、機走による航行ができなくなるに至った。






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION