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(事実) 1 事件発生の年月日時刻及び場所 平成11年6月29日16時15分 北海道寿都湾 2 船舶の要目 船種船名
プレジャーボート(船名なし) 全長 2.85メートル 機関の種類 電気点火機関 出力 2.5キロワット 回転数
毎分5,000 3 事実の経過 プレジャーボート(船名なし)(以下「ゴムボート」という。)は、幅1.47メートル、深さ0.38メートルの4人乗りの折りたたみ式手こぎゴム製ボートで、船尾のトランサムボードに船外機が取り付けられ、航行区域を限定沿海とし、年に数回、乗用車により海岸や湖沼付近のキャンプ場に運ばれ、魚釣りに使用されていた。 船外機は、本体上部に容量1.4リットルの燃料タンク(以下「タンク」という。)が組み込まれ、燃料としてガソリンに少量の潤滑油を混ぜた混合油が用いられ、また、タンク内の油量は、油面計が設けられていなかったが、タンク頂部の給油キャップを外し、給油口からタンク内をのぞくことによって簡単に知ることができた。 A受審人は、平成11年6月29日職場の仲間7人と、北海道寿都湾湾奥の海岸でキャンプをすることになり、乗用車にはいつも積んでいる船外機用燃料が約5リットル入った携帯用ガソリン缶のほかに、折りたたんだゴムボートと船外機を乗用車に積み込んで、同日08時ごろ北海道空知郡南幌町の自宅を出発し、15時半ごろ北海道寿都郡寿都町の朱太川河口付近のキャンプ場に到着し、仲間がテントを設営したが、自分は魚釣りをすることとし、ゴムボートを乗用車のバッテリーで駆動される空気ポンプで膨張させたのち海岸に運んで浮上させ、船外機を取り付けた。 このときタンクには、燃料がほんのわずかしか残っていなかったが、A受審人は、燃料が十分入っているものと思い、タンク内の油量を点検しなかったので、燃料が著しく不足した状態であることに気が付かなかった。 こうしてゴムボートは、A受審人が船長として乗り組み、仲間1人が同乗し、携帯用ガソリン缶を積み込まないまま、船首0.1メートル船尾0.2メートルの喫水をもって、15時45分寿都港北防波堤灯台から真方位152度3,550メートルの地点の海岸を発し、同地点の北方100メートルばかりの水深約2メートルのところで、船首から錨を投下して魚釣りを始めた。 16時14分A受審人は、全く釣果がなく釣場を移動することとして錨を揚収し、自ら船外機のスタータハンドルを引いて始動したところ、一旦始動したものの燃料切れのため直ぐに止まってしまい、16時15分寿都港北防波堤灯台から真方位151度3,450メートルの地点において、ゴムボートは航行不能となり、折からの南南西風により沖合に向け圧流され始めた。 当時、天候は曇で風力4の南南西風が吹き、海上は少し風波があり、潮候は下げ潮の初期であった。 A受審人は、ゴムボートが圧流されるのを止めようとして、備付けのオール2本でこいだものの圧流を止めることができず、携帯電話でキャンプ地の仲間に連絡をとって寿都警察署に本件発生を知らせたところ、寿都町漁業協同組合が同警察署から小樽海上保安部を経由して救助を要請され、17時00分発生地点から北方約700メートルの地点において、同組合所属の漁船が1隻来援した。 同漁船は、A受審人ら2人を移乗させるとともにゴムボートを揚収して寿都港に着岸し、翌30日、同受審人はタンクの給油キャップを開けて初めて燃料切れとなっていることを知った。
(原因) 本件運航阻害は、北海道寿都湾において、船外機付ゴムボートで魚釣りを行うに当たり、船外機付燃料タンク内の油量点検が不十分で、同油量不足のまま発航し、沖合で釣場を移動しようとした際、燃料切れを起こして航行不能となったことによって発生したものである。
(受審人の所為) A受審人は、北海道寿都湾において、船外機付ゴムボートで魚釣りを行う場合、燃料不足を見逃すことのないよう、船外機付燃料タンク内の油量を十分に点検すべき注意義務があった。しかるに、同人は、燃料が十分入っているものと思い、船外機付燃料タンク内の油量を十分に点検しなかった職務上の過失により、同油量不足のまま発航し、沖合で釣場を移動しようとした際、燃料切れのため船外機の運転ができなくなり、航行不能となるに至った。 |