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2000年(平成12年)

平成11年横審第128号
    件名
プレジャーボートクーニー3運航阻害事件(簡易)

    事件区分
運航阻害事件
    言渡年月日
平成12年2月24日

    審判庁区分
地方海難審判庁
横浜地方海難審判庁

吉川進
    理事官
河野守

    受審人
A 職名:クーニー3船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
なし

    原因
燃料計の指示に対する燃料タンク保有量の把握不十分

    主文
本件運航阻害は、燃料計の指示に対する燃料タンク保有量の把握が十分でなかったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年7月25日07時30分
浦賀水道航路東側
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートクーニー3
総トン数 13トン
登録長 10.70メートル
機関の種類 ディーゼル機関
出力 617キロワット
3 事実の経過
クーニー3は、平成8年にアメリカ合衆国から輸入された、1層甲板型のFRP製プレジャーボートで、船首方から寝室、台所及び居室までをキャビンとして囲み、キャビン上部に操縦席を配置し、またキャビン後部に船尾甲板を有しており、主機として同国キャタピラー社が製造した3126型と呼称するディーゼル機関2基を装備していた。
主機は、軽油を燃料として1個の燃料タンクから両舷機がそれぞれ別の燃料管で吸引するようになっていて、予備タンクを有しておらず、毎分回転数2,200で航走するときの燃料消費量が、1時間当たり約100リットルであった。

燃料タンクは、船尾甲板下の区画に設置された、厚さ6ミリメートル(以下「ミリ」という。)の溶接構造のアルミニウム製で、船尾側中央に液面深さを検出するセンサーが取り付けられ、油量を操縦席の燃料計で指示するようになっていた。
燃料計は、操縦席の計器盤に取り付けられ、目盛板に下限、上限及び中間の各液面を太い線で、また4分の1及び4分の3の各液面を細い線でそれぞれ表示していた。
ところで、燃料タンクは、頂面が平らで、底面が船底のV字形断面と同じ形状をなし、外形寸法が幅1,980ミリ、長さ1,215ミリ、中央部深さ780ミリ及び外側深さ440ミリで、積載可能容量が1,415リットルとなっており、燃料計が中間位置を指すとき約500リットル、また4分の1の位置を指すとき約130リットルの保有量となり、低い液面範囲では液面低下につれて燃料の保有量が急激に減少することに注意する必要があった。

A受審人は、クーニー3を購入後、釣りなどのレジャーに使用していたところ、燃料タンクの積載容量を1,200リットルと考えており、また、燃料計の指示に対して保有量が比例的ではないことを漠然と感じていたが、同タンクの形状や、燃料計の指示に対する同タンクの保有量を把握していなかった。
A受審人は、平成11年7月25日早朝、出港準備にあたって燃料補給をするつもりであったところ、定係地としていたマリーナの営業開始時刻前であったので補給ができず、操縦席の燃料計を見ると4分の1の線の付近を指しており、燃料タンクの積載容量から推定して同タンクに300リットルほど残っているだろうと思い、かつて燃料補給をしたことのある千葉県保田漁港まで航行できると判断し、同漁港で補給のうえ目的の海域に行くこととした。
こうしてクーニー3は、A受審人が1人で乗り組み、同乗者2人を乗せ、釣りの目的で、船首0.2メートル船尾1.0メートルの喫水をもって、06時00分京浜港東京区の夢の島マリーナを発し、主機を毎分回転数2,200にかけ、20ノットの速力で千葉県保田漁港経由、同県洲埼沖に向かった。

クーニー3は、東京湾を南下し、第1海堡の西側をかわって浦賀水道航路の東側近くを航行していたところ、左舷機が燃料管に空気を吸って停止し、A受審人が左舷機の故障と思ってそのまま運転を続けていたところ、07時30分観音埼灯台から真方位077度3,900メートルの地点で燃料不足により右舷機も停止し、航行不能となった。
当時、天候は晴で風力3の南西風が吹いていた。
A受審人は、折からの南西風で岸寄りに流されたので、水深が10メートルほどの地点に錨泊して救助を求め、来援した巡視艇から燃料を補給してもらい、クーニー3は、同艇に伴走されて横須賀港に入港し、改めて燃料を補給して定係地に戻った。


(原因)
本件運航阻害は、燃料計の指示に対する燃料タンク保有量の把握が不十分で、釣りのために出港する当日の燃料補給が早朝のためにできなかった際、途中の漁港まで航行できると判断して出港し、燃料不足となったことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、燃料補給を含む運転管理にあたる場合、燃料不足とならないよう、燃料計の指示に対する燃料タンク保有量を把握しておくべき注意義務があった。しかし、同人は、燃料計の指示に対する燃料タンク保有量を把握しておかなかった職務上の過失により、早朝のためマリーナで燃料を補給できなかった際、燃料計が4分の1の線の付近を指していたので途中の漁港まで航行できると思って出港し、漁港に着く前に燃料不足となる事態を招き、航行不能となり、巡視艇に救助されるに至った。






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