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2000年(平成12年)

平成12年長審第31号
    件名
プレジャーボートシーラブズユー運航阻害事件(簡易)

    事件区分
運航阻害事件
    言渡年月日
平成12年9月21日

    審判庁区分
地方海難審判庁
長崎地方海難審判庁

河本和夫
    理事官
弓田邦雄

    受審人
A 職名:シーラブズユー船長 海技免状:一級小型船舶操縦士
    指定海難関係人

    損害
なし

    原因
蓄電池の取扱い不適切

    主文
本件運航阻害は、蓄電池の取扱いが不適切で、補助機関が始動不能となったことによって発生したものである。
受審人Aを戒告する。

適条
海難審判法第4条第2項、同法第5条第1項第3号
    理由
(事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
平成11年12月30日17時00分
長崎市福田浦沖
2 船舶の要目
船種船名 プレジャーボートシーラブズユー
登録長 8.48メートル
3 事実の経過
シーラブズユーは、平成9年9月に竣工し、航行区域を沿海区域とするFRP製プレジャーヨットで、補助機関として、ヤンマーディーゼル株式会社製の2GM20F型と称する、連続最大出力11キロワット同回転数毎分3,400の4サイクル2シリンダ・ディーゼル機関を備えていた。
補助機関は、セルモーター始動式で、電圧12ボルト容量1.0キロワットのセルモーター及び電圧12ボルト容量55アンペアアワーの充電用発電機を装備していた。
蓄電池は、補助機関始動用及び航海計器、照明灯などの電源用として電圧12ボルト容量70アンペアアワーのものを2個装備し、3位置切り替えスイッチによって2個並列またはどちらか単独で使用することができ、補助機関運転中のみ使用中の蓄電池が充電用発電機によって充電されるようになっており、単独使用でも補助機関を始動できるものであった。

A受審人は、医療法人R医院が新造のシーラブズユーを購入後、運航管理責任者となり、長崎市福田本町にある長崎サンセットマリーナ(以下「マリーナ」という。)を定係地として、専らマリーナ沖で月に2回程度1人で、あるいは同医院職員とともにプレジャー目的で、1回につき約4時間航走していた。
A受審人は、出航時など補助機関を始動するときは蓄電池を2個並列使用し、帆走中は補助機関を停止のうえ、どちらかの蓄電池を単独使用として航海計器などの電源とし、帰港後はスイッチ位置を切とする取扱いを続けた。しかし、1回の航走で補助機関の運転時間が約1時間であったので、蓄電池が十分充電されず、平成10年12月ごろから補助機関を始動するのに通電時間が長くかかるようになり、翌11年2月には始動不能となったので、マリーナ付属の整備工場に蓄電池の点検を依頼した。

蓄電池点検の結果、電解液の比重が低下していないのでまだ交換の必要はないとの見解を得たA受審人は、同月以降マリーナ係留中に陸電で充電することとし、その後は補助機関の始動に特に異状を感じなかったことから、これまでと同じ蓄電池の取扱いを続けた。
同年12月30日A受審人は、1人で航走する目的で、15時30分補助機関を始動し、16時00分マリーナを発して沖合に向かい、同時20分補助機関を停止して帆走を開始しようとしたが、風がなくて帆走できなかったので釣りを始め、補助機関を運転して釣り場を移動する際、蓄電池は係留中陸電で充電しているので補助機関が始動不能になることはないものと思い、2個の蓄電池を単独で交互に使用して1個を常に予備としたり、補助機関の運転を継続して蓄電池を十分に充電するなど、蓄電池を適切に取扱うことなく、2個の蓄電池を並列で使用し、約1分間運転して停止することを3回繰り返し、両方の蓄電池の電気量を消耗させた。

こうしてシーラブズユーは、17時00分長崎港口防波堤灯台から真方位011度1.2海里の地点において、A受審人が4回目の移動をしようとしたとき、補助機関が始動不能となった。
当時、天候は晴で風はほとんどなく、海上は穏やかであった。
この結果、シーラブズユーは航行不能となり、A受審人が携帯電話を通じて海上保安部に救助を求め、来援した巡視艇によって発航地に引き付けられた。


(原因)
本件運航阻害は、風がなく帆走ができない状況のもとで補助機関を運転して釣り場を移動する際、蓄電池の取扱いが不適切で、蓄電池の電気量を消耗し、補助機関が始動不能となったことによって発生したものである。


(受審人の所為)
A受審人は、風がなく帆走ができない状況のもとで補助機関を運転して釣り場を移動する場合、蓄電池の電気量を消耗することのないよう、2個の蓄電池を単独で交互に使用して1個を常に予備としたり、補助機関の運転を継続して蓄電池を十分に充電するなど、蓄電池を適切に取扱うべき注意義務があった。しかし同人は、蓄電池は係留中陸電で充電しているので補助機関が始動不能になることはないものと思い、蓄電池を適切に取り扱わなかった職務上の過失により、補助機関を短時間運転して停止することを繰り返し、両方の蓄電池の電気量を消耗させ、補助機関が始動不能となり、航行不能を生じさせるに至った。






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