日本財団 図書館


8. 結言

天然ガスをエンジンで有効に使う方法として排気エネルギーを回収して天然ガスを改質する方法がある。この方法によれば、燃料の発熱量を最大30%増加させることが可能なので、エンジンの総合効率に相当の向上が期待できる。これを実現するには、高性能遮熱型エンジン、高効率タービン、高効率熱交換器、高効率改質器などの要素開発が不可欠であり、本年度はこれらの機器の設計、試作、性能試験を行った。

まず、試作した遮熱形エンジンの構造は燃焼室の外側に空気層を設ける魔法瓶構造とし、燃焼室の支持部には多重積層ガスケットを配置するなど新規の工夫を盛り込んだエンジン構造とした。本研究開発では熱伝導率の小さい窒化珪素セラミックスを用いたエンジンの燃焼室製作を目指しているが、研究開発の段階では製作コスト、信頼性、耐久性等の点を考慮し、ガスタービン等に使われているニッケル、クローム系の耐熱合金を用い、1部にセラミックスコーティングを施した。また、このエンジンでは吸気系から主燃料を供給し、副室から15%程度の燃料をそれぞれ、極めて低圧力で供給する副室式の予混合圧縮ディーゼル燃焼方式とした。初期の開発目的であるこの方式を用いた単気筒エンジンが運転出来る事を確認し、今後の研究開発に繋げるべく、基礎データーの取得と課題の抽出を行った。

一方、エネルギー回収システムの研究開発では高効率タービンの研究を行い、エンジン負荷と回転速度を特定し、タービンの翼形状を決定すればその効率を改善できると推算し、タービンの試作と実験を行った。その結果、タービン効率80%の性能を得た。また、高効率熱交換器の製作では熱交換器の最大の技術開発である多孔質金属材料と平板の接合を実験的に検討し、その接合条件を明らかにした。この接合方法を用いて多孔質熱交換層を持ち、このエンジンに使用できる大きさの改質装置に相当する熱交換器を試作した。

 

以上、本年度の技術開発課題をほぼ達成し、次年度に予定されているクリーンで高熱効率な予混合圧縮ディーゼル・ガス・エンジンの開発、高効率熱交換器の確立、排気ガス、蒸気複合タービン、排気ガス・マイクロ・タービン、等の開発に目処をつけた。本プロジェクトの概要は昨年にアメリカ機械学会で発表を行い好評を博したが、その後、世界中の研究者が燃料改質エンジンの開発に興味を持ち始めたので、技術開発競争に勝つため、本プロジェクトの燃料改質装置の実用化研究を早急に促進する必要がある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION