―これを見た北海道の一青年がその表現に接して“鳥肌立つ”ほど強い衝撃を受けた。目に見えない『磁場』の働きがある!!―「これは、何が何でも北海道の大通公園でやりたい!!」と考えて、苦労の末、ついに成功させてしまったというサクセス・ストーリーです。ジャパニーズ・ドリームと言ってもいいんじゃないかと思うのですが、このときも知事は待ち伏せ受けたそうですね。
橋本 そうですね。知事になった翌年だったと思いますが、昼飯を食べて県庁に帰ってきたらよさこいソーランを始めた長谷川君という青年が立っていて、実はこういう企画があるんだけどと、よさこいソーランの話を聞いたのがきっかけです。彼は愛知の出身で北海道の大学へ行っていたんですが、たまたまお兄さんが高知医科大学の学生さんで、しかもその後亡くなったお母様が高知医科大学に入院をされた。お母様のお見舞いに高知に来たときによさこいを見て、そこで今お話があったようにぴぴっと感じるものがあって、よさこいソーランを始めたんです。
戦後の現代社会の中で、地域の文化が全国に広がっていったというのはよさこい以外に多分ないと思うんです。よさこいはよさこいソーランだけでなく仙台ではみちのくソーラン。大阪でもメチャハッピー祭りとか、御堂筋祭りにも取り入れられていますし、今大体50から70カ所ぐらいに全国のお祭りに広がってきているというふうに言われています。大阪の県事務所などが鳴子の貸し出しをしていますが、もう毎年毎年鳴子の数を増やしても足りないくらい貸し出しの要望があるというぐらいで、まさに地方発の文化が全国に広がった一番いい例だと思います。
『磁場』といったのは、まさにそういうこともあるんですが、そういう力を現実によさこいを使って示し得た。これに対して軒を貸して母屋を取られているんじゃないかという人がいますが、それはその現象面だけをみれば、今の一時期を切ってみれば、北海道という土地柄もあり、札幌という集客力もあり観光客もいっぱい集まるでしょう。だけど、この文化を持っていかせた発祥の地はやはり本県にあるわけだし、そのことに誇りを持って本県を基点に考えてみれば、これだけ文化を全国発信できたということは、漫画だとかデザインだとか、そういうような面でも必ず発信していけるだけの磁場というか、力があるんじゃないかなというふうに僕は思います。