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4. フィージビリティ・スタディにみる事業特性

(フィージビリティ・スタディによる検討の詳細については資料編を参照のこと。)

 

(1) フィージビリティ・スタディの概要

 

・海上観光事業の基本的な収支の構造を把握することを目的として、海上観光事業を既に行っている事業者が新たな展開として観光航路を設定することを想定した。

・初期投資(新造船の建造費用)を想定したケースの比較検討ができるように、経年の収支モデルを構築した上で、運航航路や運航形態を具体化したモデル航路を想定し、事業採算性の分析を行った。

・事業上の初期設定値(事業の性格、船の規模、船価、航行時間、便数、料金設定、運航経費等)については、これまでの資料調査及び事業者ヒアリング調査等を踏まえて設定した。

 

(2) 分析結果

 

●全般的に厳しい事業採算性

・海上観光事業の事業採算上の厳しさがフィージビリティ・スタディからも伺える結果となった。

・フィージビリティ・スタディの上では、レストラン船が、飲食部門で収益を上げるという事業構造を持つため、採算的に良好な結果となっている。ただし、レストラン船の場合も、海上観光事業の特性(需要が特定日に集中し、冬季や平日の稼働率が極端に低くなる)を踏まえると、平均乗船率も高くは見込めないため、楽観視できないと言える。

・遊覧船や観光地アクセス船などの乗船料のみで収益を上げる事業形態では、付加価値付けが難しい、あるいは他の交通機関との競合がある等の理由により乗船料を高くできない分、さらに高い平均乗船率が必要となり、事業採算的に相当厳しくなる。

 

●固定費となるコストが収益に大きく影響

・収支構造的には、港費、船費、常勤人件費などの固定コストが費用上大きな位置を占めることになり、これが収益に大きく影響している。事業者ヒアリングでも明らかになったように、この固定費をいかに削減していくかが事業採算上の大きな鍵となる。

・特に、新造船を導入する場合の初期投資による金利負担や減価償却費等が採算上大きな負担となる。

・2点間運航となる航路では、港費及び現場に係る人件費が増大するため、1点発着のレストラン船・遊覧船に比べて固定費の負担が大きくなる。

 

 

 

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