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シンポジウム

「人間として人間の世話をすること」

 

コーディネイター

栗原彬(立教大学法学部教授)

くりはらあきら 1936年宇都宮市生まれ。東京大学大学院社会学研究科、コロンビア大学大学院社会学部卒。現在、立教大学教授、政治社会学者。水俣フォーラム代表、日本ボランテイア学会代表。国内外でのフィールドワークや旅から学ぶ。研究テーマは市民社会論、アイデンティティ論、社会運動論、宗教社会学など。

著書に『管理社会と民衆理性』(新曜社)、『人生のドラマトゥルギー』(岩波書店)、『コンサイス21世紀思想辞典』(共編著・三省堂)、『内破する知』(共著・東京大学出版会)など。

 

ケアということは、現場でも、また理論面でも十分検討されてきたとは言えない。

ケアは、従来ケアする人とケアされる人の2分割の構図を前提に、専らケアされる側の問題とケアの技法に焦点が置かれてきた。介護制度に見るような福祉の制度化、「奉仕活動の義務化」の動きは、この傾向にいっそう拍車をかけるだろう。ケアを人間存在の本質として捉え返すことなく、ケアの制度化とテクノロジー化と産業化にひた走る光景が支配的である。

いま、「ケアする人のケア」という問題の立て方をケアの議論に織り込むことによって、私たちはこの2分法の構図を超えて、より根元的に、より相互的な人間の営みとして、ケアということを問い直すことができるのではないだろうか。

ケアとは何か。ケアは必要か。ケアは好ましいことか。ケアと人間存在との関係は?

多様な現場から、また多様な視座から、広角的にこれらのケアをめぐる問いにアプローチしていきたい。

 

 

 

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