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データは日本近海を中心としたものになるが、海上保安庁という単一の機関に所属する船舶による観測であることから、比較的良好かつ均質なデータの収集が可能である。この事業の一環として、船底への送受波器の設置ミスあるいはジャイロコンパスの設定ミスを、往復航路から補正係数を算出、補正を行うプログラムを先ず作成したことは、昨年度の活動要覧に述べた。

一般的な品質管理ソフトは、データの品質を判定し、品質フラグをつけるものである。これには、水温・塩分等のデータ値の品質管理プログラムと同様に、必要情報の欠如の検出、測点の位置や時間等の基礎的な異常記載に関するもののチェックを行うものである。測点が陸上にあるような場合を検出する海陸チェックや、見かけの船速が異常に大きい場合を検出する船速チェック、さらには受信信号の異常の検出等を行うことが、第1段階のヘッダー部のチェックである。第2段階は、測定値のチェックから誤データを検出して、それにエラーフラグを付けることである。検討の結果、流速値の異常値の発見、すなわち当該海域において考えられないような大きな測流値が発見された時、これを誤データとする操作で、ほとんどの異常データは除去できることが分かった。従って、あらかじめ設定した閾(しきい)値(例えば250cm/s)を超すデータを発見して、エラーフラグを付すものである。開発したソフトウェアにはこの他、一連の観測値に一定の閾値を越えた非連続的数値が現れた場合にフラグを付ける機能も有している。船首方向が急に変更された場合や、船速が急変化した場合に測定値に異常が現れることが知られているので、これらの検出も可能である。また、測器のウォーミングに時間を要することから、観測開始時の定時間のデータを使わないようにするべきであるという報告や、また船速が一定速度より遅くなると、測流値が不安定になるという報告もあるが、テストの結果ではこれらを考慮する必要がないと判断されたので、これらを検出する機能は備えていない。データの収集・統計の際に、必要であれば、このようなものを検出する操作ソフトに加えることになろう。

 

海流データセットの作成

開発したソフトウェアを用いて品質管理をJODCに集積されているADCPデータに施して、クリーンな測流データベースの作成を2000年度に実施してきている。96隻の巡視船・測量船から集められているデータはクルーズ数にして3600を超している。1クルーズには通常1000を超す測流値が含まれている。ファイルの形態は3種類程度であるが、ファイルの品質管理は十分とは言えず、ヘッダー情報にもかなりの不備が発見された。中には船舶名が、各管区に連絡しても同定できないものもあり、重複・一部重複データ等の取扱いにも、かなりの時間を要した。修復が現時点では不可能なものは、別個にまとめて後に検討することとし、正常とみなされるデータのデータベース化は2000年度中に終了する予定である。

これとは別に、ADCPの利用が一般化する前のGEK(電磁流速計)の資料や、最近のドリフターによる測流資料の収集と品質管理を行い、データベース化する作業を実行している。

 

 

 

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