第1章 研究の概要
1.1 研究の目的
海底地形情報は、海洋の利用、開発あるいは研究にとって最も基本的な情報であり、最近では津波の伝播計算、海洋循環のシミュレーションなどには必須のものとされている。
また、海底地形の構造解析から、地震断層の発生機構を明らかにすることも可能になり、防災上からも重要な情報である。
これまでの海底地形の測量は、船からの測深に頼らざるを得ず、未測の海域を広く残しているうえ、測量船が自由に立ち入ることのできない海域もあり、均質で高精度の海底地形が得られていない海域が多い。
最近開放され利用可能となった衛星アルチメトリ(高度計)・データは、地球全域をカバーしており、そのデータの解析手法から高精度広域海底地形図を作成できる可能性がある。
このため、既存の測量船による高品質水深データを用いて、アルチメトリ・データを評価するとともに、同データから海底地形を描画できる推算方式を開発し、これまで精度の良い海底地形が得られなかった海域を中心にした高精度広域海底地形図等を作成し、併せて海底地形構造の研究を行い、学術上の進歩発展に貢献するとともに、船舶航行の安全及び海難の防止に資することを目的とするものである。
1.2 研究内容の概要
本事業は、浅海域、中深海域及び深海域の測量船による既存の高品質水深データを用いて、同海域の衛星アルチメトリ・データを評価するとともに、北西太平洋データ空白域の海底地形を3年計画で明らかにする。平成12年度は、2年度目として前年度の成果を踏まえ、下記項目について研究を実施した。
(1) 海底地殻構造の文献等の収集・整理
解析の対象海域を東経170〜180度、北緯30〜36度(GEBCOのメッシュ番号G1806に相当)にとり、対象海域を中心とした海域において、海底地形及び断層帯の分布、堆積層厚分布に関するデータを東海大学等から収集した。
(2) 海域区分の検討
対象海域について、伝達関数と堆積層厚の分布を比較した。
(3) 海域区分を考慮した海底地形推算手法の検討
予測精度を向上させるために、前年度に開発した海底地形推算手法に対し、深さ毎のバンドパスフィルターの設定、予測水深と観測水深の残差の埋め戻し等の改良を検討した。検討結果に基づきプログラミングを行い、対象海域に対し検証を行った。
(4) メッシュデータの試作
対象海域の船舶実測水深データとSmith & Sandwellの水深データとの差をとり、差の大きな観測水深は異常値として除去した。残った水深データを用い、メッシュデータを試作した。
(5) コンター(等深線)図の試作
メッシュデータより、コンター図を試作した。