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あとがき

 

本編中でも触れたように、日本列島における『船競漕』の趨勢は、全体的な劣勢傾向、すなわち、消滅するところが増えていることと、消滅させないために船をプラスチック化したり、漕ぎ手の数を減らしたり、競漕を簡略化したりしているところが多く、年ごとに衰兆著しい。

そんな事情下での調査だったため、全国的な範囲での存在把握は大変難しかった。とくに過去には存在したが、現在は姿をけしている場合、役場などの公的機関では職員が若いため記憶になく、現地調査を丹念にしない限り把握できなくなってきている。今のうちなら辛うじて、現地にゆけば史誌や古老などからまだ確認ができそうで、本調査の不備は今後、継続的に埋めていきたいと考えている。

もし本報告書をご覧になって、間違いや、変更、追加その他資料をお持ちの場合ぜひご連絡あるいはご提供くださるようおねがいします。

本調査は調査結果の分析を目的にしていないので、深くはふれなかったが、今後、「海の文化」の伝播、変容、伝承など全国規模で『船競漕』行事を研究することは、若い研究者にとって興味深いテーマを秘めているのは間違いない。つづけてくださる人がいないものだろうか。

最初に意図していながら、ほとんどできなかったのが「船大工」の現存確認に関する調査であった。当初の予想に反して、『船競漕』用の船づくりは競争の公平性を保つため船の均一さがもとめられ、万一の苦情を避けるため地元の船大工より他地区の船大工に依頼する場合も多いなど、その地だけでは調査しきれず、調査時間を多く必要としたため、手の回らなかったことにもよる。改めて船大工に集中した調査を要する。

最後にこの調査にあたっては、多くの方々の時間を煩わせた。親切にご応対ご回答くださった方々に紙面を借りて厚く感謝するものです。

 

平成13年3月31日

石原義剛

 

 

 

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