5. 国内規則案
前節に示した試計算結果に基づき、運輸省から下記の国内規則案が提示された。
・「SOLAS規則II-1章第8規則どおりとするが、8-2および8-3規則については、非国際航海船舶に対しては最大搭載人員400名以上であっても適用しない」
6. 国内規則案の検討
前節の国内規則案を内航客船に適用した時の問題点を明らかにするために、単胴客船、双胴客船、半没水型双胴客船についてSOLAS規則に基づく損傷時復原性計算を実施した。
6.1 単胴客船
まず、試設計した(A)〜(E)船について区画係数を計算した結果、いずれの船も0.5以上となり、1区画可浸要件適用船であることが確認できた。
続いて、1区画浸水計算を行った。判定基準のうち、最終平衡角が7度未満であること、および復原てこ曲線下面積の算出のための横傾斜角が22度までである点が、第3節で述べた2区画可浸の要件と異なっている。
損傷時復原性計算の結果を表6〜10に示す。いずれの船も、いずれかの区画において要件を満足しないことが分った。このため、各船に対して1区画可浸要件を満足させるための対策について検討した。表6〜10の中には、それぞれの対策をした場合の結果についても記載している。各船の対策について要約すると以下の通りである。
(1) A船
横隔壁を1枚追加の上、KGoを4%下げる。
(2) B船
横隔壁を1枚追加の上、KGoを2.3%下げる。
(3) C船
KGoを0.43%下げる。
(4) D船
機関室の前の隔壁を若干移動する。
(5) E船
クロス・フラッディング設備の設置、隔壁の追加。
以上のように、各船とも、1区画可浸要件を満足するためには、中央部の車両区画、客室部等の水密区域を細分化するか、もしくは浸水後の横傾斜角を減らすためにクロス・フラッディング設備を設けるか、船底に固定バラストを設けて重心を下げること等が必要であることが分った。
ただし、小型客船を除くと、新造時の設計の時点からの配慮があれば大きな問題にはならず、SOLASの1区画可浸要件を適用することは妥当であるとの結論に達した。