4 船体傾斜時における歩行速度と流動係数に関する実験
人の歩行速度、流動係数は避難解析において基本の係数である。船舶の場合には、避難者が船員に誘導されて移動する群衆流であることに加え、通路・階段の傾斜時、動揺時について解析する必要がある。文献資料において、陸上等における通路・階段が水平である場合の資料は多くみられるが、船舶に対応した資料は見あたらないことから傾斜、動揺時における群衆流の歩行速度、流動係数の測定実験を行い、傾斜時における避難の影響を検討した。
4.1 経路傾斜時の歩行実験
通路等経路の傾斜時歩行実験は、船員に導かれて歩く群衆流を想定し、男女約20名の被験者により行った。歩行速度、流動係数は個々人ではなく群衆全体を対象として解析した。また、様々な避難条件において種々の人体移動係数を使用する場合を考慮し、船体が水平である場合を基準とした傾斜時の補正係数を求めることにより、今後の応用を可能とした。
傾斜歩行実験における模擬通路は、足場用鋼製パイプで構成し、通路の長さは約6m、通路幅(手すりの内側間隔)は1.2mとし、床は木製でカーペットを張り、手すりは0.9mの高さに設置した。模擬階段は、階段傾斜角度は45度、段数は10段として、水平面への投影寸法2mとした。その他、ステップ面はカーペット張りとし、手すりは左右に、0.9mの高さに取り付けた。
群集を対象とした歩行速度と船体傾斜時の補正係数を表4.1.1、流動係数と船体傾斜時の補正係数を表4.1.2に示す。