苦労はしましたが、最終的にはテストドライバーや免許教員の方々からシミュレータの操船感覚はほぼ実艇と同じとお墨付きを頂きました。しかし、さらに苦労したのが、教育シナリオとCGによる景観画像の作成でした。シミュレータの開発目標が、体験的に海上交通ルールを学習する用具から、最終的にはスラローム、離着岸、人命救助など実技科目の乗船実習を一部代替できる用具にまで広がったため、遠近感を含め各段に高いリアリティーが求められることとなり、シナリオとCGは何回もの被験者テストを通して改良が加えられました。本シミュレータ開発の成果は平成8年2月開催の東京国際ボートショーへの出展という形で一般に公開され、一般来場者からも高い評価を得ることができました。平成9年には、乗船実習が一定の時間数を限度として、小型船舶シミュレータによる訓練に置換えられることが法的に認められ、小型船舶操船シミュレータの教育機関への導入が進みました(平成12年3月末現在で計11台の納入実績)。現在、水産高校を中心とする教育機関でシミュレータは有効に活用され、高い教育効果をもたらす用具として高い評価をいただいています。
4. 謝辞
操船シミュレーション技術の開発と実用化は、入社以来一貫して取り組んできたテーマでもあり、その成果が僅かながらも社会に貢献できたと思えることは大きな喜びです。今回の受賞は、一緒に開発に取り組んできた多くの仲間のお陰であり、ここに深く感謝申し上げます。また、今回の受賞にあたりお力添えを頂きました運輸省殿、(社)日本造船研究協会殿にこの場を借りて厚くお礼を申し上げます。