(解脱)
海陸一体の国内交通システム
塩田浩平※
1. はじめに
我が国では、物流の効率化を図るために、また、交通安全や環境保全、防災対策等のためにも、効率の高いモーダルシフトの早期実現が望まれるのは言うまでもない。ところが、地上の交通混雑があまりにも甚しいためか、モータリゼーションの進展に悲観的な見解をとり、トラック輸送に取って代わる新たな輸送手段による近未来のモーダルシフトに大きな期待が寄せられているのが現状のようである。
しかし、差し迫った現実の問題としてモーダルシフトを早い機会に効率よく実現するためには、このような悲観的な展望に基づく発想ではなく、むしろ逆にモータリゼーションの進展を積極的に支援する観点から、これから先モータリゼーションを我が国情に見合った独自の態様でより一層円滑に成長・発展させるために海路を如何に活用すればよいかについて鋭意検討すべきであろう。
このような趣旨によれば、時間価値が尊重される主要幹線道および高速道路と緊密な連携のとれる新しい「高速海上ルート」を日本列島の周囲に開設し、特にピーク時に地上の交通混雑から車両そのものを救済できるようにするのが国情に最も適したモーダルシフト対策であると考えられる。そこで、本稿では、モータリゼーションに対応できる新しいコンセプトの超高速船による高能率な「海陸一体の国内交通システム」の実現について提案させていただきたい。
2. 高速海上ルートによる海陸一体化
平成13年を目処として先に閣議決定された「総合物流施策大綱」では、「多様化する輸送ニーズに対応した選択肢の拡大」を図るために、「輸送モードが相互に連携した交通体系を確立するというマルチモーダル施策を推進してゆくことが特に重要である」としている。
しかるに、現実ではカーフェリーの撤退が相い次ぎ、一時は逆モーダル現象さえ見られ、新しい海路の活用(ニューフロンティアの開拓)は大きく立ち遅れる一方で、巨額の予算を投入して第2東名・第2名神高速道の建設が進められ、交通機関が狭隘な地上にますます集中的に偏在化する傾向が顕著となり、環境保全や防災対策の上からも、また、地域の活性化と言う点からも、国全体のバランスが大きく失われつつあるように見受けられる。
これから先、我が国がバランスよく健全に発展してゆくためには、まず、危機に瀕しているとまで言われてきた国内物流を一新するための対策が是非とも必要とされるが、単に物流の効率化だけでなく、その他の重要な課題である交通安全や環境保全、防災対策、地域の活性化等をも勘案した上での真に国情に見合ったオリジナリティのある新しい総合的な交通対策が求められるべきであろう。
その具体策としては、新しい海路の積極的な活用を目指して、モータリゼーションに対応できる新しいコンセプトの超高速船を開発し、主要幹線道および高速道路と連携のとれる新しい「高速海上ルート」を日本列島の周囲に開設することによる高能率な「海陸一体の国内交通システム(Fig.1参照)」を創設するのが国情に最も適していると確信する。
※ 特許事務所勤務