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この3人の方がおられなかったら今の日本造船業は無かったかもしれないと思います。そして、現役の方々が今も新たなるCIMSの発展のために知恵を絞っています。心から声援を送りたいと思います。

 

(4) 大競争時代への突入

韓国が台頭しいまや生き残りをかけた大競争時代に突入しています。やがて中国も加わってくるでしょう。これからまだまだ辛い時代が続きます。

しかし造船は簡単に放棄するには余りにも惜しい産業です。造船の世界はone marketで大きく波動します。これは他の製造業には見られない厳しい条件です。重工業の一部門であれば、社長は2年も赤字を続ければ事業撤退を考えるかも知れません。しかし、それでは造船業は成り立ちません。不況時はロスミニマムに徹し好況時に取り戻して、事業としての採算を維持発展すると言う視点が必要です。

図-1は海上荷動量(トン・マイル)です。2度にわたるオイルショックは戦争を除けば100年に一度の大変動と考えるべきですが、その石油荷動き量の減少は10年で回復し以来乾貨物と石油の荷動き量は共に一様に伸び続けています。

一方図-2の船種別新造船竣工量を見ると、オイルショック前後の70年代に大量に建造されたタンカーは今や大部分がスクラップされつつあります。80年代にはバルカーの大量の投機発注があってその後需要は落ち込みましたが、90年代半ばからは世界経済の好調を受けて、タンカー、バルカー、大型コンテナー船等の大量需要が出ました。しかし、90年代初頭からの韓国造船業の大規模な設備拡張やwon安により船価は下落し、円高も加わって日本造船業は今苦戦を強いられています。

当面、いろいろと問題は尽きませんが、しかし、アメリカ、欧州の経済の堅調とアジアの回復によって、海上荷動きの着実な増加が期待でき、マクロには決して悲観すべきでないと思います。

現在ヨーロッパの造船業の建造量は日本の1/3ですが、売上は日本造船業のそれに匹敵します。ヨーロッパ造船業はどっこい生きているのです。客船とリグのお陰という声も出ましょうが、そればかりではありません。活発な物や人の流れに支えられて、高速船の分野は百花繚乱という現状です。

 

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図1 海上荷動量推移

 

 

 

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