日本財団 図書館


この対象となるHAPsは、キシレン、トルエン、エチルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチレングリコール及びグリコールエーテルで、EPAはMACTにより基準年(1990年)に1,500トン排出されていたこれ等HAPsを350トン減らすことを目標にしている(60FR64330)。

 

港湾が大気汚染に及ぼす影響の最大のものは、液体貨物の積み下ろし時に空中に放出されるHAPsである。米国内には約1,900の港湾(バース数3,200)と約1,800の河川ターミナルがあるが、何れも液体貨物の積み下ろしに関係し、CAAAに記される189のHAPsのうちベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンを含む60種類のHAPsを排出している。キシレンは発ガン性があり、肝臓や腎臓に悪影響を及ぼす。また、神経系統を冒し、発育不全をもたらす。

 

MARADが管理している政府手持ちの国防予備船隊は古船が多く、排ガスの観点から問題があることは前述のとおりであるが、スクラップされる隻数も多い。これらの古船には、PCB、アスベスト、水銀等の有害物質が多く含まれていてスクラップも容易ではない。

1993年、EPAはMARADが管理している国防予備船隊をスクラップするため、外国に売却しないことを勧告した。その結果、1994年130隻の古船を外国に売却しスクラップしていたMARADは、1994刧97年の間2隻を外国に売却したに過ぎず、有害物質を排出しないよう注意深く米国内でスクラップする方針に変わっている。1998刧99年の2年間で、MARADが米国内でスクラップした古船は22隻である。

 

船舶及びその関連産業からの大気汚染は、それ等が撒き散らす海洋汚染に比べれば罪が軽いと考えられるが、EPAは舶用エンジンからの排ガス規制を今後とも強めていく方針である。

特に、ディーゼルエンジンについては、3-2節で述べたごとくレクリエーション用ボートに対する基準、37kW以下のエンジンに対する基準、再生エンジンに対する基準、カテゴリー3エンジンに対する基準、補機エンジンに対するNETと今後めじろ押しで基準が出される予定であり、ガソリンエンジンについても3-3節で述べたSD/I SIエンジンに対する規制が近い将来出される予定なので注意深いフォローが必要である。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION