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1996〜1998年の間、海運業の債務総額は、新造船の急激な増加に対する融資のために、年18%の割合(単純成長)で増加したと推定される。これは、1988年から1996年の間、年およそ8%(単純成長)で、海運業の債務総額が安定した伸びを見せたのと対照的である。表6.Bの債務成長率は、新造船に対する控えめな融資レベルと、その間に返済される債務の一部再融資をベースとしたものとなっている。所要債務の成長率は、1999年に世界でおよそ13%(EMEは10%)で、その後世界規模では年9〜10%(EMEは5〜7%)に落ちている。調達される債務と所要資金との差額を埋めるためには、(すなわち、投資は)世界総計で128億ドル(EMEでは15億ドル)必要である。

EME以外の融資だけを考えた場合、債務の成長率は1999年で17%必要であり、2000年には16%に下がり、2002年までは、13%となるであろう。必要な投資総計は113億ドルである。この新造船資金需要の大半は、極東(そして極東の造船所)のものである。

海運業に関する債務市場の現状についての上記の状況をもとにすれば、EME内の債務成長率はずっと穏やかであるのに対して、EME以外、特に極東地域における債務の供給量が満たされることは難しいとみられる。同様に、投資の需要も、EME以外は113億ドルで、8倍以上である。これに対し、1994年以来調達できたIPO投資は、たったの14億ドルである。(これに加えて、第2次募集でかなりの額が調達できたが、ほとんどがクルーズ会社であった)

結論として、1999/2000年は、現在の新造船手持ち工事に見合うだけに十分な債務や投資資本を調達することは、EME以外ではかなり難しいと言えるであろう。その結果、新造船の延期を生み、極東の造船所に厳しい経済的圧力を及ぼすことになりうる。これにより、新造船の供給が遅れ、運賃の幾分の改善という結果になるかもしれないが、巨大な新造船発注残の存在のために、運賃が大きく上がることはありえない。EME内では、資本需要に見合うだけの十分な資本の成長がみられるので、この状況はそれ程決定的ではない。

 

6.8 海運業への資本供給の傾向

 

6.8.1 債務-商業銀行及び政府機関

商業銀行の海運業へのクレジットの供給は、1998年後半に減速し、海運信用のシンジケート市場の貧弱さや、いくつかの大手海運債務提供者の撤退/合併のために、1999/2000年に銀行クレジットの急速な成長が再び始まることは期待できない。このことは、資本需要が非常に高く、融資源がより限られているEME以外をベースにした借り手に、特に圧力を与えることになる。この様な状況のもとでは、政府金融機関が引き締めを解くことが期待されるが、極東のクレジット状況では、それも許されないかもしれない。1999年は、銀行にとって非常に大きな需要の圧力がかかっているが、2000年には、EMEでは、圧力も落ち、2001年になると、EMEをベースにした海運銀行は、多分クレジットを渇望するようになり、多量の新造船に加えて見込まれる中古船売買の増大を支持できる状態となるであろう。

貸付手法に関する傾向は、プロジェクト構造から離れ、企業貸し付けに向かっている。もし海運会社がこのまま統合へと動いていけば、こうした貸し付け手法は、益々普通になり、特に大手の海運ファイナンス銀行ではそうであろう。

 

 

 

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