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6.6 公募債及び投資市場へのアクセス

海運借入人によるハイ・イールド債市場へのアクセスは、現在のところ限られているように見える。これは、表6.Aに示されるように、主に、格付け機関によって行われた既存のほとんどの海運債の格下げによる。これに加えて、不履行に陥ったり、それに近い状態になった発行済債券の元々の発行人の中には、債券保有者に対してドル当たり25〜30セントで債券の買い戻しを申し出たりした。これは、債券保有者に、快くは受け入れられなかった。海運発行人がハイ・イールド債市場へなかなかアクセスできないことは、単に臨時的なものであると考えられている。とはいえ、新しい発行人には、しっかりした成長戦略を持った、より質の高い信用が必要である。

 

表6.A:1999年非投資等級海運会社の信用格付けの格下げ

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5.11項で記述したように、公開投資市場は、一番良いときでも、海運IPOをそれ程受け入れてはいない。同様に、第2次株式発行も、投資した資本に対して適当な競争力のある配当の見込みを投資家に確信させることができる場合にのみ成功する。逆周期の海運投資は、良い利回りをもたらすという見方があるが、投資からの退出は全て公開市場での売却である。これには、周期のピーク時に敢えて投資する投資家を必要とするが、それには中期的な成長の潜在力が必要である。海運業が統合へ向かう傾向は、公開投資の投資家を引き寄せるのに必要な着実な利回りを提供することができる、より効率的な大手の会社を生み出す結果となり得る。

 

6.7 海運資本の需要と供給

3.4項で新造船と中古船売買の需要を検討した。1997〜2001年の新造船の大量の発注は、1990年代初期の需要を大きく越えた資本需要をもたらしている。この需要は、今日までのところ、主に債務市場によって賄われている。既に述べた理由によって、債務ポートフォリオの総数はあくまでも推定であり、将来の需要予測のためには、幾多のその他の推測も必要である。間違いや不正確さが増幅される可能性もあり、その結論は慎重に扱うべきではあるが、全く何もしないよりは、合理的な評価をしたほうがよいと考えられる。世界及びEMEの海運業に資金提供するために必要な、既存及び新規債務を、図6.A及び表6.Bに示す。

 

 

 

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