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この市場見通しの概要は、単純化されすぎているように見えるかも知れないが、これは一致した見解であり、銀行ごとに多少の相違はあるが、全て同じ論議である。この意見の一致が示唆することは、優先弁済貸出人は同様な動きを取り、そのため、海運業の周期性に合わせた周期的なファイナンスが行われ、その周期性をさらに強めることになるであろうということである。

 

6.2 信用基準と取り組み

優先弁済貸出人の借入人に対する信用規準は、相変わらずしっかりした財政状態、優れた経営陣及び業績、そして高質の船舶資産(特に船齢面での質)である。借入人の絶対的な規模は主な関心事ではなく、量より質ということである。しかしながら、大手の国際銀行では、借入人候補を受け入れるためにあらかじめ選抜を行い、最低限の財政的規模が必要条件となることは、よくあることである。

全ての大手の銀行は、船舶プロジェクト貸付を避け、企業貸付に向かうという、傾向が明らかに見られる。しかし、船舶の担保は引き続き重要であり、特に伝統的なローン構造からの変化の兆候がほとんど見られない場合は重要である。

大手企業の中には、無担保、またはネガティブプレッジベース(すなわち借入人はその船舶(又は船舶の一部)を他の貸出人の保証のために担保として提供しないこと)での無担保で借り入れを行っているものがあるという報告もある。しかしながら、こういったやり方がどれくらい広まっているかについては、様々な反応がある。

小型の船舶は大手国際銀行にはあまり好まれないが、国内の専門の船舶抵当銀行、特にヨーロッパ大陸においては、間違いなく引き続き重要である。

 

6.3 信用条件

1998年のウェット及びオフショア部門の悪化によって、海運銀行市場へのプレッシャーが増加することとなった。1997年以来、不況が続き、借入人の現金が使い果たされ、担保価値を下落させてしまっていたドライ部門のポートフォリオでは、銀行は既にローンの問題の抑制に苦闘していた。こういう場合の銀行の通常の対応は、保証条件の増加と価格の引き上げである。しかしながら、これは相対的な微調整であって、本来の対応は信用供与の撤回である。

優先弁済銀行融資はローンの利ざやが2.5%を超えることは希で、海運の借入人は通常0.5〜1.75%の範囲に入っているので、価格を大幅に上げる可能性は限られている(すなわち、値上げは0.5%プラス手数料の幾分かの増加までであろう)。担保マージンの増加も可能ではあるが、船舶の市場価値が下がる場合、150〜175%の担保率に見合うように、より多くの船舶が必要となるのが通常である。しかしながら、積極的に市場分析を行っている銀行は、担保率に潜在する「クッション」をよりうまく判断できる。市況が底の時に担保クッションが50%であれば、船舶の市場価値が20%上がるだけで、80%のクッションとなりうる。反対に、市況がピークの時の50%のクッションは、担保価値の20%の下落で、たった20%のクッションに急激に下がることもあり得る。

信用条件が厳しくなり、価格が上昇する最も重要な理由は、銀行の競争圧力の減少である。

 

 

 

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