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5.14 個人投資・ファイナンス-海運業の伝統的資本源

この報告書では、海運業における個人投資の資本価値は、海運業の総資本評価額と、第2章及び3章で述べられた海運ファイナンスの他の主要資本源の額の差額から導き出される。海運業の評価額は上下するが、主な債務要素は比較的安定しているので、公開及び個人投資要素が市場価値の変化に最も影響している。公開投資は、クルーズ会社が独占しており、純資産価値の何倍もで売買され、他の海運分野で起こっている変化にはほとんど影響されないので、最も気まぐれなのは個人投資の要素ということになる。本報告書では、EMEの海運業の個人投資は、1999年末現在で、158億ドル、12%と算出された。これは、EMEの海運業に投資されたと査定される総投資の34%にあたる。

 

5.15 個人投資・ファイナンス-投資家及び利用者の規準

個人投資の投資規準は、業界への接近度に関係していることが多い。歴史的に、海運の最初の個人投資家は、海運業の運営に直接関わっている船長や貿易商等が多かった。今日では、海運業を相続したり、海運業が重要な役割を果たしている社会(例えばノルウェー)で育ってきた一族である場合が非常に多い。これに加え、国内の造船業を振興するために考案された税制措置によって、個人投資が引き寄せられている。これらがビジネス投機として成功することは希で、財政的崩壊に終わる場合も多い(例えば、デンマークのK/S政策)。他の個人投資家は、貿易業者(例えば、Dreyfus Group)、荷主、造船事業者(デンマークのBuermester and Wain現在は解散)のいずれかで、業界と関係を持っていることが多い。一般に、事業に密接な関係があることが、幾多の投資リスクを無視し、より幅広い投資市場で入手できるものより低い利回りでも受け入れる結果となる。事業のつながりが存在するケースでは、ビジネス全体の関わりを考えた場合には、適当なリスク/利回りを提供するとしても、投資は二の次となりうる。

個人投資資本の利用者を見ると、彼ら自身が投資家である場合が非常に多い。彼らの資金需要や野望が、財政政策や実行面を支配することは、よくあることであろう。彼らは、「インサイダー」として、事業を好意的な態度で管理することができると同時に、また、通常何かしら自分たちのために「救命ボート」を用意することで完全な崩壊への下落を避けることもできる。個人海運投資家の第3世代は、事業を滅ぼしてしまうか、専任の専門の経営者に事業運営を任せることが多い。個人海運会社の主要企業家が亡くなったとき、相続したものは、部分的にだけ海運業に投資され、ほとんどが、家族が受取人となって、より伝統的な株式市場や銀行投資基金に投資されていることが多いのは、興味深いことである。このことが、過去20年間も現在も、個人海運投資家の海運業への投資決定に影響を与えているものが、経済の基本原則ではなく、リスクが付き物の海運業に対する個人的な容認や満足のままであるという見解を一層強める事になるのである。

 

5.16 個人投資・ファイナンス-EME海運投資家

本報告書の第3章の分析に基づいて、EMEの海運業の主要支配会社を市場価値別に確認することが可能である。このリストから、全ての上場会社を除くことで、純粋に個人が管理している企業が確認できる。上場海運会社のなかには、同族所有者が大半であったり、高い影響力を持っているものもあり、これが分かっている場合にはこれらの上場会社も含めたが、上場企業である旨を付記した。

 

 

 

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