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フィンランドとフランスの輸出信用機関は、特に自国の高価なクルーズ船建造を反映した多額のポートフォリオを有している。ここで注目しなければならないことは、上記のあるいはこれに類似の政府の融資機関は、必ずしも前項で述べた商業銀行の融資基準を適用するわけではないということである。というのは、彼らのビジネスの動機は、国内の造船業界における新造船を有利なものとすることにあるからである。

1998年末現在で、およそ45の主要な商業銀行が、EMEの海運業界にローン供与を行っているとみられている。歴史的には、各国の海運会社は、国内の融資機関で資金の供与を受けていた。特にヨーロッパ大陸内では、これらは、厳格で通常保守的な貸出し規則に基づいた担保融資を専門とする特別に法人組織を組んだ「船舶抵当」銀行であった。そうすることによって、これらの船舶抵当銀行は、国内通貨で長期の低利債を発行し、国内投資家がそれらのポートフォリオへの資金供与ができたのである。国際融資は、海運取引を組み立て、マネーセンター銀行へのシンジケートローンを組む、ロンドンをベースにした証券引受銀行の領域であった。1970年代にユーロ・ドル市場が成長するに伴い、まもなく主要な米国の銀行がヨーロッパでの船舶融資を少なくともローンの量において席巻するようになった。同様にユーロ・ドル市場で拡大してきた主要なヨーロッパのマネーセンター銀行がそのすぐ後に続いた。スカンジナビアの為替統制が撤廃されたことから、スカンジナビアの銀行もユーロ・ドルでの海運業への融資活動を広げていった。しかしながら、1979年と1975年の海運業の大不況によって、まずロンドンをベースにした証券引受銀行の影響力が減退し、1980年代末には、米国及びヨーロッパのマネーセンター銀行がポートフォリオの規模を縮少し始めた。

EMEにおける、優先弁済債務資本の供給者を、1998年末時点で見積もったポートフォリオの大小により分類した。これを表5.Cに示す。

 

表5.C:EMEにおける銀行ローンのポートフォリオの見積もり

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