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2.3 システム性能評価

システムの評価および従来技術との比較を行う際の評価方法は、前述のように以下の2種類の評価基準を用いる。圧縮式システムとの比較は2]を用い、吸着式システムとの比較は1]、2]の両方を用いて行うことができる。なお、今回対象とする低温排熱での駆動が困難な岐収式システムは、比較システムから除外した。

1] 冷熱変換効率:ηH=(冷凍能力:kW)/(回収排熱量:kW)

2] システム成績係数:COPs=(冷凍能力:kW)/(消費電力:kW)

 

2.3.1 圧縮式システムとの比較

前節の要素試験の結果および考察より明らかなように、エジェクター式のシステム成績係数は圧縮式システム(通常の空調条件で成績係数は5程度)と比較して4〜5倍の高い値となり、同じ冷凍能力を得るのに要する消費電力は4〜5分の1となることが示された。さらに、ポンプ以外に可動部がないため、メンテナンスおよび信頼性の面でも有利となる。

装置コストや重量、設置スペースに関する比較は、本要素試験装置が複数の作動媒体およびエジェクター形状での試験を可能とするように設計されたものであるので、詳細な定量的比較・評価を行うことはできないが、図15のエジェクター概観や添付のユニット内部構造図からもわかるように、従来の圧縮式システムと比較して、大型化・高コスト化する要素は全くない。ただし、機能上必要となる熱交換器等の構成要素はどのシステムでも変わらないので、従来と比較して大幅な小型化は難しいといえる。

船舶にとって貴重な電力の消費を最小限に抑え、かつ高い信頼性を有するエジェクター式排熱回収システムは、従来の圧縮式システムと比較して格段の優位性を有することが明らかとなった。

 

2.3.2 吸着式システムとの比較

まず、1]の冷熱変換効率で比較すると、吸着式システムは、低温排熱時において約0.6程度の熱回収効率を持っており、エジェクターの要素試験結果と比べて吸着式システムが優れていることがわかる。ただし、従来捨てられていた排熱をどの程度回収できるかというこの指標は、船舶に適用するシステムの優位性を評価する際に最重要なものとはならず、装置のコストや設置スペース、装置重量などが実用上より重要な指標となる。吸着式は、原理的にバッチ操作となるため、切替えバルブ等による装置の大型化やメンテナンスを含めた高コスト化要因がある。

船舶にとって貴重な設置スペースおよび装置重量を最小化できるエジェクター式システムは、熱回収効率に優れた吸着式との比較においても総合的に優位性を有するといえる。

 

3. あとがき

 

船舶機関の低温排熱利用冷却システムとしてのエジェクターヒートポンプ適用について、要素試験研究を行い、実用化可能性を検討した。その結果、従来方式と比較して、消費電力や設置スペースを最小限に抑え、かつ高い信頼性を有することを確認した。

さらに本研究は、船舶内の環境制御および省エネルギーに留まらず、地球温暖化防止等の観点から様々なエネルギーシステムヘの適用が期待できる重要な要素研究テーマであることを示した。

今後この要素試験の成果を基に、船舶への適用に向けた実証研究開発を行っていく。

 

参考文献

(1) Nehad A1-K., An experimental study of an ejector cycle refrigeration machine operating on R113, International Journal of Refrigeration, Vol. 21, No. 8, 1998.

(2) Soren L., et al, District heating assisted ejector cycle refrigeration plant for process cooling and air condition purposes, II F - II R - Section B and E, Oslo, Norway, 1998.

 

 

 

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