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航行に関する情報

海図は、水面の上あるいは下にある障害物など、船舶運航者に多くの情報、特に、水深についての情報を与えている。この情報の価値を判断するために、操船者は、海図作成の基となる最新の測深記録を知る必要がある。もし航海者が、測深資料についてもっと知りたいときは、その海域の合衆国沿岸水路誌で見ることができる。沿岸水路誌は、海図の発行日付を見ることが最重要であると、航海者に助言している。しかしながら、海図に見られる発行の日付は、その海図を作成するときの基礎となった測量の全資料を示しているものでも、全情報が最新のものであることを意味しているものでもないし、また、以前に記入されていた資料が書き替えられていることを意味しているものでもない。沿岸水路誌は、潮海流や陸地が正確に描かれていても、海図にない岩場の存在が、常に、問題であると強く警告している。

1939年のヴィンヤード海峡水域の測深作業に用いられた手法は、当時の技術を代表するものであった。音響測深儀による測深は、水深の0.4倍を半径として設定された海域と水深40から50フィートでは直径16から20フィートで描かれた海域で行われた。しかしながら、定められた約400メートル(1,300フィート)の測深間隔では、かなりの部分で測深洩れが生じるし、測深間隔の中間での海底についての情報は、少ししか得られない。航海者は、海図の数値が本質的に正確なものと考えるから、海図上に簡単な注意を書き添える一方、詳細については、沿岸水路誌に、水深決定の全測量作業について書き加える必要がある。たとえそういう状況であったとしても、海図は、航海援助資料であって、安全を保証するものでないから、常に、注意を払って使うべきである。海図精度は、資料作成技術の確かさによるものであり、同型船が何航海もしている水域を除いて、たまの測量では、どんな障害物も完全に見つけ出すのは不可能である。航海者が、狭水道や水深に疑いのある水域での航海方法を決定するのに、十分な情報を与えることができるよう、測深作業についての記事を示すべきである。

QE2のナビゲーターは、船長の承認を受け、ブラウンズ・レッジ礁付近の浅海域と、深度39フィート地点の南方をそれぞれ通過する進路線を計画した。また、ナビゲーターは、注意を喚起し、この海図の使用者が必ず見るように、深度39フィート地点を含んだ浅海域にマークを書き入れたのである。水先人は、自分の進路として、ブラウンズ・レッジ礁の北側を選定した。これは、ソー・アンド・ピッグス礁の南方及び二つの岩礁地帯のほぼ中間に存在する深度39フィート地点の北方を通過するものであった。事故発生時に使用されていた海図では、今日では利用できる正確な測深の情報を示していなかったけれど、航海者に、岩礁に対する注意を与えることで、その目的を果たそうとしていた。

 

 

 

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