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1992年のNOAA調査には、衝撃地点(岩石)2、3、4と6の深度についての記録がなかったので、AUSS調査との深度比較はなされていない。AUSS調査団が示した水深測定値には、衝撃を受けた岩石の推定上下移動量を含んでいる。しかし、6個の岩石のうちの2個だけが衝突したので、このAUSSの移動推定量は、正確なものである。

 

運輸安全委員会による船体沈下推定量とキューナード社による船体沈下推定量との比較…NOAAとAUSSの調査による、衝撃を受けた岩石の水深は、安全委員会とキューナード社の双方でQE2の船体沈下を推定する際の基本資料に用いられた。安全委員会は、本船の船体沈下量を4フィート半から8フィートとの間であると推定する一方、キューナード社は、2フィートから3フィート半と推定した。この推定量の差となる主な理由は、NOAA調査とAUSSの調査で示された、岩石の深度差(RR Iで1.4フィート、RR IIで2.8フィート)にある。NOAAの調査資料でなくAUSSのものを使うと船体沈下推定量は、明らかに小さくなる。調査深度にNOAAとAUSSとで大差があることに関し、NOAAは、安全委員会に向けた1993年4月6日の文書で、“AUSSとの合意の下に、NOAAのRR Iの最小水深と慎重に比較して、衝撃地点1の水深を小さくすることとした。AUSSの調査団は、ほぼ1箇月半後に水圧式計測器による観測を再開したが、この計器はかなり流されて偏位していたようである。”と説明した。NOAAは、“各機関の測量手順と測量目的にかなりの差異があるように思える。計器[水圧式計測器]を点検し、測量結果を検討する必要がある。”ようだ、と記している。更に、NOAAは、“AUSSの水圧式計測器は、測深開始前に公認の施設で誤差量の検出をしていなかったようだ。”と証言している。

安全委員会は、NOAAの情報が、繰り返し実施された詳細な調査資料を基に作られているところから、より信頼の置けるものと考えている。その最終資料は、一般的に見て、NOAAの1992年の測量でまとめられたものと一致している。そして、NOAAが報告した機器の誤差検出方法は、AUSSの報告書(注40)に示されたよりもずーと立派なものであった。

船舶の船体沈下量を決定するに際して、キューナード社は、RR Iによって受けた最大の損傷個所が、船底キール板の上方ほぼ2フイートの所で生じていると想定している。しかし、事実は、船底キール板上4から5フィートの所にも損傷があることを示している。この高所の損傷がRR Iによって生じたとしたなら、キューナード社による船体沈下推定量は、ビルジ・キールの損傷部を基準にした3フィート半から5フィート半ないし最高所の損傷部を基準にした6フィート半にまで増大させなければならない。

安全委員会は、本件についての筋書が多数考えられるのは、調査資料の矛盾によるのは勿論のこと、衝突した岩石自体が接近し、多数であったからと考えている。そこで、安全委員会は、船体損傷部の観察で得た分析を使って、数理的な計算を独自に行ってきた。安全委員会の数理的計算は、水力学者の追加調査の資料を基にして行われ、同委員会が観察された船体損傷を分析して求めた結果と非常に近いことを示している。

 

 

 

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