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海図は、調査期間中の一般的な状況あるいは報告を示しているものであり、必ずしも現状を示しているものではない。珊瑚礁地帯、岩礁あるいは大石が多数存在する海域では、何の調査でも、総ての障害物を探索するのに失敗することは常に考えられる事態である。海図の刊行の日付は、航海従事者にとっては、実に大切なことなのである。

合衆国海図は、航海援助設備の変更または最新の海底調査(部分的なもの、全体部のものを含めた。)、新たな障害物、航行に支障となる移動可能な障害物の認知に合わせ、定期的に改訂されている。しかしながら、海図には、海図や海図部分に向けた最新の水深調査の日付については記入されていない。それとともに、海図にも沿岸水路誌にも調査方法とか調査範囲とかについての説明がないのである。

QE2船内での航海情報経路の一つは、英国水路誌(注32)であった。同水路誌には、ナンタケット及びヴィンヤード海峡について、次の様な記事がある。

ナンタケケット及びヴィンヤード海峡の航行には、多数の浅瀬、強い潮汐流、季節によって発生する濃霧そして狭あい部でしばしば遭遇することとなる多数の航行船があることの理由から、最大の注意が必要となる。浅瀬の多くは急峻で、水深は極めて不規則である。そのため危険に近づき過ぎているとの認識を得るには、記載された水深だけを頼っていてはいけないのである。

 

海図及び調査に関する情報…本件発生に先立って、この海域では合わせて三回の調査が、1887年の8月から11月、1939年の6月から9月それと1966年の8月から11月にかけてそれぞれ実施された。1939年の調査期間中に、カッティハンク島の南方約2海里半のところに水深39フィートの地点が発見されたのである。その上、地理学者達は、この海域の底質が岩盤であることを確認し、海図ではこの地点に“rky”の記号を入れて表示したのである。1939年の調査では、水深39フィート地点付近の実地による再調査を奨めたが、この進言が実行されたかは確認されていない。1993年3月8日付けのNOAA通達では、1931年の地理学年鑑を引用して次のことを提案している:

[測深を]進展させること-進展の範囲は、重要な水域や多くの船舶の喫水に近い水深をもつだけの海峡や錨泊地における最大規模のものから、航行に必要な水深よりもずーと深度のある広い海域での、最小規模まで、種々なものになる筈である。

ヴィンヤード海峡のカッティハンク島の真南にある、39フィート地点に隣接した水域は、狭水道内にも重要な海域内にも存在しているわけではなかった。この海図上で重要なのは、バッザード湾からロード・アイランド海峡までの、はるか西方を航行する船舶に影響を与える海域部分であった。

 

 

 

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