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同船は、傾斜を持った砂洲に接近していたところ、急速かつ短時間の船体沈下現象で船首トリムが発生してこの事態となったのである。

1980年に発生した、一海難事件では安全委員会は、水先人乗船中のバーミューダ諸島籍撒積船フォートカルガリー(注26)が、ヒューストン運河でほぼ全速力で航行中であったと断定した。この速力が、船体沈下に向かう力を強め、操縦性の悪化から針路を不安定にさせる因となり、合衆国曳き船ブラゾスとその被曳きバージとに衝突させた。被曳きバージの一隻から流出したブタディエン・ガスが引火してブラゾスの火災となり、その結果、乗組員5人全員が火傷を負った。本件の損害は、総額86万ドルに達したとされている。この件での別の分析(注27)で、研究者は、フォート・カルガリーの過大な速力が船体沈下を増大させ、船体が底触して操船性が滅失し、バージとの衝突を招いたと証明している。

注23 浚渫済み航行運河の水深決定の基準。1983年国立研究審議会海運部発行。

注24 1984年7月30日海難原因/海難原因背景の報告書要約-アルビナス篇(NTSB/MAR-85/02/SUM)

注25 A.M.ファーガソン、D.B.セレン及びR.C.マックレガー共著、沖合に突き出た砂洲乗揚についての実験的調査。

1982年王立造艦技師研究所発行。

注26 海難事件報告書-合衆国曳き船ブラゾス、バーミューダ籍船撒積専用フォート・カルガリー衝突事件。1980年8月7日ヒューストン・シップ運河で発生。(NTSB/MAR-81/01)

注27 海難事故-何が原因か?E.T.ゲイツ著1989年ガルフ出版会社発行。

 

その他の情報

船橋内の資源管理…1989年以降、安全委員会は、船橋内の資源管理(BRM)の概念を押し広めてきた。これは、航空機操縦室内の資源管理(CRM)の概念から派生した考え方である。CRMは、乗務員が致命的な危険についての情報を共同して処理できなかったことによる航空機事故が増加する傾向にあった、1970年代の終わりごろから1980年代の初めにかけ、民間航空会社が発展させたものである。

主力航空会社と研究者達が、乗務員が任務に就くまでの労力を緩和させるために、操縦室内そのままの機能を持たせた環境の中で、CRMの訓練を行い、発展させてきた。この“操縦室内の資源管理”、の言葉は、乗務員に教育するに当たって機器類、情報内容、個人の資質などの操縦室内の利用可能な諸資源を落ち着いて監視できるよう、また、飛行中の重大危機に対して効果的な判断力を育成できるよう、いかにして組織力を活かすのか、その重要性を強調するためのものである。

 

 

 

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