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(2) 韓国造船企業の強み・弱みと今後の展望

韓国の造船企業の強み・弱みは、次の表のとおり整理できる。日本の造船企業に対する韓国造船企業の最大の強みは、価格競争力である。価格競争力の源泉として、要素価格の安さ、規模の経済性、生産性の上昇が指摘できる。総合的に見た場合、韓国の造船企業が優位に立っている5。特に、VLCCや大型コンテナ船といった韓国企業が注力してきた分野では、韓国の造船企業の優位性が顕著である。このような点を背景に、韓国の造船企業の受注は好調であり、既に2003年上半期までの工事量を確保している。

半面、韓国の造船企業の最大のリスク要因としては、大宇重工業で見られたように、当該企業の業績が良好であっても、グループ他社の破綻の影響を受けて、企業経営が一挙に悪化する可能性がある点である。また、韓国の造船業が競争上優位であったとしても、新造船市場が大きく縮小した場合、事業多角化が遅れているだけに、企業収益が大きく悪化する恐れがある。韓国国内のアナリストの中にも、将来の韓国造船業に対する見方が分かれているが、見方の違いは、韓国の対日競争力評価に関する差異というよりも、将来の世界の新造船市場が安定的に推移するか否かといった市場の見方の差異に起因するものである。

 

5 その他、日本には見られない韓国の取り組みとして、業界共通の物流拠点を釜山に設けている点が指摘される。舶用機器メーカーはこの物流拠点に製品を納品することになる。舶用機器メーカーの立場から見ると、物流コストが抑制できる半面、その分は価格引き下げ圧力にもなっているようである。このような業界全体の物流拠点の設置は、大手造船所の立地が地理的に集中している韓国であるからこそ実現されているとも見ることもできる。

 

 

 

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