はじめに
本報告書は、社団法人日本舶用工業会が実施した「舶用工業の高度情報化の推進に関する調査研究」事業の成果をとりまとめたものである。
本事業は、「情報技術を活用した舶用機器のアフターサービスの充実に関する調査研究」事業と「情報サービス・ステーションの機能拡充整備」事業から構成され、舶用企業の情報化の方向を示すために第1ステップとして平成8年度から平成10年度までの3年間実施した「舶用工業の高度情報化の推進に関する調査研究」の成果を受け、第2ステップとして平成11年度から3年間計画で実施している事業である。
第1ステップでは、舶用工業企業が高度情報化社会の到来を迎えて取り組むべきものとして、7つのソリューション、「1]フレキシブル設計生産(仕様変更に容易に対応するため)」、「2]異業種間協調設計(仕様変更を減らすため)」、「3]電子商取引」、「4]船級協会等に対する電子申請」、「5]船陸間コミュニケーション」、「6]営業情報武装」、「7]情報共有基盤整備(1]〜6]を実現するインフラ)」を示した。このうち、「異業種間協調設計」および造船業界、舶用工業界共同の「情報共有基盤整備」が造舶Webプロジェクト(シップ・アンド・オーシャン財団「舶用機器の設計・技術情報の交換の高度化に関する開発研究」事業)として結実されている。
さて、平成11年度から実施している本事業のうち、「情報技術を活用した舶用機器のアフターサービスの充実に関する調査研究」事業は、「船陸間コミューケーション」を具体化させるものとして、海運業界と舶用工業界が共同で取り組むソリューションの実現に向けた第一歩であり、将来的には海運業界、造船業界、舶用工業界共同の「情報共有基盤」上で、造舶Webで構築された「異業種間協調設計」と並び展開されるものと思考している。また、事業の名称としては、最近では「船陸間コミュニケーション」が狭義の船舶との通信の意と解される可能性が大きいため、当会会員の中核をなす舶用工業企業と船社、船舶管理会社、船舶等とのネットワークの構築を目指して、アフターサービスの充実として掲げた次第である。
「情報技術を活用した舶用機器のアフターサービスの充実に関する調査研究」事業では、アフクーサービスにおける船社と舶用工業企業間の情報交換の質的向上と迅速性の飛躍的向上を目指し、インターネット等のグローバルなネットワークを活用した業務方法を提示し、世界の船社との間で緊密なアフターサービスネットワークを早期に構築し、会員企業の国際市場における優位性確立を目標に実施している。
舶用工業企業は、20〜30年間という非常に長期間にわたる船舶運航の支援として、修理・部品補給・緊急対応等のアフターサービスの実施を通じ、船舶の安全運航と海洋環境保全に貢献する重要な社会的責務を担っている。特に近年、船舶管理業務がISMコード強制化を受け大きく様変わりしつつある現状を踏まえ、船舶管理者支援に重点をおいた最新、最適な業務方法を提示することとしている。
また、同時に実施している「情報サービス・ステーションの機能拡充整備」では、アフターサービスの充実等調査研究事業で得られた成果の実証を行うとともに、舶用工業の業界ポータルサイトとして、会員企業の世界へ向けた情報発信への取り組みを支援している。
なお、本事業の実施にあたり、「高度情報化専門委員会(委員長:東京大学工学部名誉教授小山健夫氏)」のもとに、企画・調整小委員会(WG-0)(主査:東京大学工学部助教授鎌田実氏)と舶用工業情報サービス・ステーション拡充整備小委員会(WG-SS)(主査:(株)シンコー経営企画本部システム部課長 平原辰弥氏)を設置して本調査研究を推進し、委員各位の全面的なご協力と調査委託先である(株)三菱総合研究所を始めとする関係先の甚大な協力のもとに本報告に取りまとめることができたものであり、これらの方々に対し心から感謝の意を表する次第であります。
平成13年3月
社団法人 日本舶用工業会