― 運航監理官の仕事の内容を聞かせて下さい。
福島 旅客船等により人を安全に運送していただくために必要なことえを担当しています。特に、事故の報告がありますと、事故原因を究明し、再発防止策を確立するというのが最も重要な仕事です。
― 海上運送法とは?
福島 海上運送法は、「海上運送の秩序を維持し海上運送事業の健全な発達を図り、もって公共の福祉を増進すること」を目的としています。国内旅客課はこの法律に基づいて旅客船・カーフェリーの安全確保に当たっています。
この十月一日から海上運送法の一部が改正されます。その柱は、需給調整の廃止、運賃規制の緩和、安全規制・利用者保護規制の強化です。また、従来安全規制の対象外であった旅客定員一二名以下で人を運送する事業者にしても安全規制・利用者保護規制が適用になります。具体的には海上タクシーやRORO船など旅客定員一二名以下の船舶運航事業者で、これらの事業者が安全に運送事業を行うため、運航管理規程を作成、届出していただくよう、必要な指導を行うことにしています。
― 昨年は旅客船の海難が若干増えました。とくに「フェリーむろと」の事故は印象に残りますが。
福島 運航管理規程の中に運航中止基準があって、例えば視程がある基準より悪いときは出入港を中止することになっています。
「フェリーむろと」の場合は、当時視程があまり良くなく、一時的に視程が回復したときに船長が入港を決意しました。ところが、強風のためか一回で着岸が成功せず、やり直そうとしたときに一気に視程が悪化して、周囲の状況が分からなくなり、操船のタイミングを失ったようです。ワンチャンスに賭けて入港を試みたのですが、成功しなかった例のように感じました。気象が不安定な時、特に操船エリアが限られている港ではその判断に慎重であって欲しいものです。「迷ったらやめる」ということが肝要かもしれません。
― 訪船指導に関するご意見を。
福島 現在の訪船指導のやり方もいいのですが、事故を起こした航路とか、長年訪船指導していない航路とかではなく、一歩踏み込んでもっと頻繁に多くの船を抜打ち的にチェックする体制を採用することで事故防止につながるのではないかと考えています。それも公的機関ではなく民間レベルでのチエック体制はどうかと考えています。このような方法は船員にとっても事業者にとってもいい意味で緊張して運航することにつながると思うのですが。
― 今後の安全対策のあり方を。
福島 安全対策はある程度完成の域に近づいていると思います。問題は、事故原因の七〜八割が人為的なものであるように、例え安全規制が完全であっても守る側の人間が安全意識を持っていない以上事故は起きてしまいます。
究極の安全対策は「船員教育」に尽きると思います。船員は安全意識を持って、今やっている作業がどういう作業なのか、どういう所に注意が必要なのか、そういう意識を常に持ちながら作業に就いていただきたいと思います。また、慣れと油断も安全には大敵ですので、常に適度な緊張感を持って運航に従事して欲しいと思います。
口を酸っぱくして「安全第一」を言い続けたいと考えています。
(聞き手=村上)