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あとがき

 

今日、地球環境の汚染が世界的な問題となり、人類の歴史に暗い影を落としています。我が国や欧米諸国などの工業先進国では、既存の環境保護・保全政策だけでなく、まもなく迎える21世紀とさらなる未来に向けて、人類の「持続可能な開発=持続せる発展」をどのように保障するかが重要な課題となっています。

一方、市民の環境に対する意識の高まりはグローバルな問題だけでなく、ライフスタイルの見直しや「身近な自然」への関心の強さともなっています。私たちはこのような状況をふまえ、1983年から身近な生物・生態系の保全を前提とした「里山の保全と活用」を提唱し、我が国の美しい里山・田園景観の保全に取り組んで来ました。この提案は大きな反響を呼び、故郷の野山に通ずる「里山」の言葉とともに、都市における自然復元(ビオトープ)運動や各地の「まちづくり」「むらおこし」運動などと結び付き全国に広がりつつあります。

ところがこのような急速かつ広範な運動の広がりに対して、まだまだ的確に対応できる組織や自治体は少なく、農業・林業家の高齢化などとあいまって深刻な技術者、指導者不足を来しています。したがって、「里山の保全と活用」に関する知識と管理技術を修得した多くの指導者の養成が急務となっています。

そこで私たちは、今日までの研究と実績を基礎に、国際的なテーマである「持続可能な開発」のモデルとしての里山の活用をも視野に入れつつ、当面2000年(21世紀)を年次目標に里山などの植生管理のできる指導者の養成に取り組んでいます。さらに「里山の保全と活用」に関する様々な課題に答えるために、課題ごとの各種プロジェクトチームを組織し、市民ボランティアの育成にも取り組んでいます。

 

 

 

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