はじめに
私たちはコブシやマンサク、キブシの花からはじまる日本の春を、そしてレンゲやタンポポの咲き乱れる田や畑があるのを知っています。
カブトムシやクワガタがどんな木にやってくるかを教わり、流れる川は冷たくメダカやフナ、ドジョウなどたくさんの生き物がいることも経験しています。
そして今、私たちは世界の中で最も「豊かな国」に暮らしていると言われています。その豊かさの裏側で、森の静けさ、川のせせらぎ、たゆとう豊かな海を失って来ました。
子どもたちの賑やかな遊び声や、老人の語らう姿が町角から消え、やがて人々の暮らしの場であった街も消えていきました。
私たちはこの様な状況をふまえ、1983年から身近な生物・生態系の保全を前提とした「里山の保全と活用」を提唱し、その普及に取り組んできました。
都市周辺に残存する「里山」は、単に“みどり”としての景観機能だけでなく、災害から人々を守り、豊かな水を提供しています。また植物を育てる土をつくり、四季折々の美しい花を咲かせます。
そして、シカ、キツネ、タヌキ、リスなどの動物たちやオオムラサキ、カブトムシなど様々な生き物の生息場所ともなっています。
私たちは、祖先が大切に守り育てて来た薪炭林や、農用林などの里山を市民の手でリフレッシュし、各地の風土や伝統的技術を活かした美しい田園・里山景観の保全に取り組んでいます。
なお本冊子は、「里山の管理指導者の養成、並びに里山保全プロジェクトの育成」事業における活動マニュアルとして作成いたしました。