芝居の筋は鎌倉時代。親が仏の教えを信じないから、死んだ娘が地獄で苦しんでいると、墓参に来た父親に旅僧が語るところから始まる。親が仏の教えを信じ功徳を積むと、地獄に落ちた娘の霊も観音菩薩の力で鬼の責めから逃れる。賽の河原で遊ぶ子らを苦しめる鬼たちの手から、地蔵菩薩が救ってくれる。江戸時代からの伝統劇だが、文盲の里人を、こうした芝居で仏の道へ導いたのではないかと思わせる説得力がある。
芋念仏
近くの飯岡町では、仏教を信じるようになった老人たちが、視界に浄土が入るようになると、年に数回集まっては、祭壇に観音菩薩などの掛物を吊るし、太鼓や鉦で囃しつつ立念仏を唱える「芋念仏(いもねんぶつ)」がある。一時間余供養すると、親しい者同志、グループに分かれて飲食を共にし歓談するのが何よりの楽しみ。古老によると八百年の伝統がある。芋とは、里人が持ち寄るものが芋ばかりだった時代が長く続いた故だと言う。