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6-2 歴史を守り、活かすまちづくり構想

 

(1) 伝統的建物の保存と修景

日野地区の歴史的町並みをどう保全していくかがまず重要なテーマです。室町時代から現代に至るまでの綿々とした歴史の流れで形成された日野地区の町並みは、少なくなっているとはいえ伝統的建物が数多く点在しています。このまま推移すれば、現代的な建物に更新していき、伝統的建物の喪失と歴史的な町並みの良さが滅失してしまう恐れがあります。伝統的建物は現代にも通用する良さと美しい外観をもっていますが、生活や商売を営むには不都合な面があるのも事実です。したがって、その良さを活かしつつ、暮らしやすいように改造することが大切です。

ではどのように伝統的建物の保存と修景を進めればいいのでしょうか。

 

伝統的建物の良さに対する皆の認識を高める

何よりも住む人自身が伝統的建物の良さを自ら知ることが大切です。歴史的な価値の認識、町並みとしての景観の美しさ、落ち着いたすまいのたたずまい等、現代の新しい建物にはない日野地区らしい個性をもった建物に住むこと、これが皆の誇りとなるようにしていくことです。

 

保存・修景に対する支援措置

伝統的建物を維持保存していくには多大な経費を必要とします。これが老朽化を進め、安価な現代的建物に変化していく大きな要因でもあります。皆で町並みを守っていこうとする方向づけと自助努力が重要ですが、それだけでは限界があります。したがって、伝統的建物の保存と修景には何らかの行政的支援が必要です。その方法については色々な事例があります。保存建物を定めて単体保存か、保存地区を定めて修景補助か、一つの方法は保存建物を定めて単体として保存する方法です。まず、残すべき建物をリスティングして、その建物については行政として保存修景助成を行っていくことです。町並みとしての保存には弱いですが、少なくとも重要な歴史的建造物のこれ以上の滅失を防ぐ効果があります。この対象としては、近江商人の旧家から始めるのが妥当でしょう。

もう一つは町並み保存地区を定めて、その地区内において、日野地区の歴史的景観を守って建物の改修等を行おうとする人には、修景保存に対する助成措置を行うことです。町並み形成にとっては望ましい形ですが、これにはまとまった財政措置が必要ですので、町財政との調整が必要です。

また、建物本体ではなく外構(塀、生垣、石積み等)の修景保存に助成措置を講ずることがあります。日野には「桟敷窓」という特異な形状が息づいています。祭りと結びついた素晴らしい伝統であり、是非とも保存・新設に対する助成措置を考えるべきです。

 

住民のまちづくりの考え方が方向を決める

伝統的建物の保存と修景の方法は、どんなまちにしていくかという基本的な問題に帰着します。したがって、住民のこれからのまちづくりの進展とイメージの持ち方が決定していく重要な鍵です。

 

住むための改造も平行して

伝統的建物はそのままでは住みにくいといえます。特に高齢化時代になり、お年寄りやハンディをもった人達には極めて不親切な住まいといえます。しかし、今後の福祉を考える時基本となるのがノーマライゼーションと在宅福祉です。したがって今の家をハンディキャップをもった人でも住みよく改造することが大切です。

 

 

 

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