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Q101 スモール・シェリー・フォッシルとはなんですか?

A101 カンブリア紀に入るとすぐに多量に見つかりはじめる刺や骨片など、珪酸、炭酸カルシウム、燐酸塩などからできた微細な化石(Small Shelly Fossils = SSF)をさします。海綿、軟体動物、腕足動物、節足動物、あるいは棘皮動物が含まれており、カンブリア紀に入って現生につながる多細胞動物門が、しかも硬骨格をともなって一斉に出現したことがわかります。死後バラバラに分離するので復元や分類学的位置づけができないものも多くあります。最近中国やグリーンランドからSSFがバラバラにならずに保存された化石が発見され、SSFをもつ動物の多様性の片鱗を知ることができました。例えば細かな網目状構造をもったミクロディクチオンは、中国のカンブリア紀の初期の地層から見つかった化石によって細長い胴体を持つ動物の左右側面に並んだ刺の基部であることが明らかになりました。この動物は胴の表面に多数の環状の皺を持ち、また先端に一対の爪が生えた爪脚をもつことから、有爪動物に分類できます。

 

Q102 バージェス頁岩化石動物群というのはどういうものですか?

A102 1909年、アメリカ人ウォルコット(walcott)によってカナディアン・ロッキーのバージェス峠に露出する古生代カンブリア紀の頁岩(けつがん)層から発見された、繊細な軟組織の構造までが保存された約5億2千万年前の多細胞動物化石群を指します。同様の化石群は、今日では世界中の約30ヵ所から知られています。現生の動物は、体のつくりの基本的な設計図の違いをもとに、例えば、二枚貝、巻き貝、イカ、タコは軟体動物門、エビやカニは節足動物門にというふうに30ほどの門に分けられています。現在の動物門のうち、化石に残りそうなもののほとんどはバージェス頁岩化石動物群から見つかります。さらに、頭部にエビの様な触角と丸い口をもち、胴には柔らかいヒレのような構造をもったアノマロカリス(Anomalocaris)、五つの目を持ち頭の先からノズルが突き出したオパビニア(Opabinia)、体の前半部はエビで後半部はサカナのようなネクトカリス(Nectocaris)をはじめとして現在の門にあてはまらない動物も多数発見されています。

 

Q103 カンブリア大爆発とはどういうことですか?

A103 カンブリア紀には、現在の門の数をしのぐほど多様な形態をもった多細胞動物が一斉に出現したことが、最近明らかになってきました。このことをさしてカンブリアの大爆発と形容します。これは、有名なバージェス頁岩や、最近中国の澄江などで軟体部の詳細な部分まで保存された化石を詳しく研究することによって明らかになりました。カンブリアの大爆発の原因については、海水中の酸素濃度が動物の活発な運動が可能なレベルまで上昇した、動物が骨格を作りやすい濃度にまで海水中の炭酸塩や燐酸塩の濃度が上昇した、陸地の風化浸食によってリンが浅海に供給され、多細胞動物を支えることができるほどに植物プランクトンが豊富になった、また、当時超大陸が小さな大陸に分裂した結果、大陸を取り巻く海岸線の総延長が大きくなり、多細胞動物の住む場所である浅海の面積が増大した、などの説が提唱されています。

 

 

 

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