Q71 陸上には何種類の植物がある?
A71 現在、生物界には、植物、動物に加えて、菌類、単細胞真核生物、原核生物という5つの仲間が一般に認められ、そのほかに細胞寄生体としてウィルスがいる。これらをすべて含めた生物の種数は、認知されているだけで150万種、未知のものを含めると実際には億を超えるといわれる。植物は名前がつけられているものだけで27万7千種、そのうち藻類は27,000種である。陸上の25万種のうち最大の種数を誇るのはなんといっても被子植物で、少なくとも22万種ある。シダ植物が1万1千種、被子植物の祖先である裸子植物はわずかに800種ほどである。以上は維管束植物で、陸上にはこれ以外に維管束のないコケ植物が1万8千種ある。陸上植物はすべて緑色植物であるが、その祖先である緑藻類は7,000種しかない。こうしてみると、陸上では種が非常に多様化しており、そのほとんどは維管束植物だということになる。だからといって、少数派が地球にとって不要ということではない。
Q72 どうしてコケはコケのままなのか?
A72 陸上植物のなかで、コケは小さくてあまり目立たない存在である。なぜコケは小さいのか。それは、コケの基本体制と関係がある。種子植物では目立たないが、陸上植物は一生の間に二つの体を交互に使い分ける。一つは配偶体という卵と精子(あるいは精細胞)を作って有性生殖をする体、もう一つは胞子体という胞子を作る体である。初期の陸上植物にとって、陸上で分布を広げるには乾燥に強い胞子を、できるだけたくさん遠くに飛ばす方が有利である。コケは、胞子嚢を1つしかつけず枝分かれしない、マッチ棒のような胞子体をたくさん作る戦略、シダは大型の胞子体にたくさんの胞子嚢をつける戦略を選んだ。コケの胞子体は配偶体に寄生し、自分自身では大きくなれないので、コケが胞子を遠くに飛ばすには、胞子体を養っている配偶体を大きくする必要がある。そうならなかったのは、配偶体が大きいと精子が卵までたどりつけず、受精に支障が出るからだと考えられる。
Q73 陸上植物の役割は?
A73 植物が上陸しなかったら、このような文章もない。動物である人類も登場しなかったからである。それでは話にならないので、現在陸上植物が生態学的にどのような役割を果たしているか、考えてみよう。最大の役割はやはり有機物の生産である。陸上には海の500倍の植物があり、1年に1,100億トンの炭素を光合成によって有機物に変えている。これは海の3倍の生産量である。他の生物がこれを利用する。例えば人類は、地球全体の年間光合成産物の40%を利用している。それは、食糧だけでなく家や道具、紙を作ったりする原材料、薪のようなエネルギー源など、あらゆるものを含む。これだけ膨大な量の植物が陸上にあると、地球全体のミネラルや大気、水の循環、気候にまで影響する。海が森によって育てられる例は、別にふれたとおりである。人類の文化にも陸上植物が深く関わっていることは、文学、芸術、工芸などさまざまな例を挙げずともわかるであろう。