生命は30数億年前原始の海で誕生した。この地球内生命起源説は、現在のところ生命起源論者の大多数の支持を得ている。しかし、ごく少数の科学者は地球外生命起源説を唱えている。たとえば、地球上の生物は地球上で生まれたのでなく、他の天体から胞子や植物の種子のような胚種によってもたらされたという考えである。地球上で生命が生まれるとき、突然生まれたわけではない。簡単な物質から複雑な物質をしだいしだいに合成しながら、秩序あるシステムを形成し、その機能を高めて、より生物に近いものへと進化していった。地球が形成されて、最初の生命が誕生するまでのおよそ10数億年を化学進化の時代、それ以後を生物進化の時代と呼んでいる。
Q60 化学進化についてもう少し詳しく説明してください?
A60 化学進化の過程は便宜的に4つの段階に分けることができる。すなわち、(1)原始大気からシアン化水素、シアノアセチレン、ホルムアルデヒドなどの簡単な反応活性物質が生成する段階、(2)反応活性物質からアミノ酸、核酸塩基、糖、脂肪酸、炭化水素などの低分子化合物が生成する段階、(3)低分子化合物が脱水縮合しながらつながり、タンパク質、核酸、多糖、脂質などの高分子化合物が生成する段階、(4)高分子化合物が相互作用しながら集合し、複製や代謝などの機能をもった原始生命が発生する段階である。生命を構成する分子の素材の大部分は、地球の原始大気からつくられた。その素材を生成させるエネルギー源は、太陽からの紫外線、雷の放電、海底熱水噴出孔や陸上火山からの熱、超新星や太陽からの宇宙線、地球内部からの放射線、隕石や彗星の落下による衝撃波などである。また、その素材の一部は地球形成後、彗星や隕石のような天体から持ち込まれた可能性もある。
Q61 生命は海で誕生したと言われていますが、その根拠は何でしょうか?
A61 生命が海で生まれたという根拠の一つには、現在の生物の元素の組成と海の元素の組成がよく似ていることがあげられる。海水中にはたくさんの元素がとけ込んでいる。水を構成する水素、酸素をはじめ、地球上に存在する92種の元素のうち約80種の元素が海水中にとけている。生命には、海の中に多く存在している元素ほどより多く使われている。地球上の生命は、天然に存在する92種の元素のうちのおよそ30種の元素を用いてつくられている。このような事実と、約4億年以前の生物はほとんど海棲生物であったとする古生物学的事実から、生物は海で生まれたと一般的に考えられている。
Q62 リンは海水中には多量に含まれていないが、どうして生物では重要な役割をしているのですか?
A62 生命は海水中に多く存在する元素からつくられていることがわかった。しかし、リンは例外である。リンは海水中には多量に含まれていない。その順位は多く含まれている方から16番目である。リンは遺伝情報坦体のDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)の鎖の連結手として用いられている。