Q39 海に住む魚は海水を飲んでも平気ですが、人間が海で漂流したとき、海水を飲んでもよいでしょうか?
A39 どんなに喉が乾いても、絶対に海水を飲んではいけません。人間は魚が進化してできた動物ですが、陸地の上にある真水を飲んで生きるように体の生理が変わってしまっています。真水と海水では、細胞に対する生理作用が大きく違うのです。人の細胞の中には、いろいろな物質がとけていますが、0.9%の食塩水と似た状態にあります。そのため、0.9%の食塩水を生理的食塩水といいます。この濃度の塩水であれば、飲んでも生理的に支障はありません。しかし、これより濃い濃度の食塩水を飲むと、細胞から水が絞り出されて、脱水症状を起こします(なめくじに塩をかけると、体から水が絞り出されて縮んでしまうのと同じ原理です)。すると、喉が乾いて、ますます水を飲みたくなるのですが、海水は3.5%の濃度なので、海水を飲むと、ますます細胞内から水が絞り出されて、喉が焼け付くように渇いてしまうのです。一方、真水を飲む場合は、細胞内の物質の濃度が0.9%より低くなるように思えますが、腎臓で水だけを体外に排出するようにできているので、細胞内の濃度を一定の値に保ことができます。
一方、海水に住む魚は、海水を飲んでも脱水症状を起こしません。それは、塩だけを鰓や腎臓から体外に排出する特別の仕組みをもってからです。サケは、子供の頃は川で暮らし、成長すると海に入ります。そのとき、体の生理機能が変化し、淡水型の生理作用から塩水型の生理作用に切り替わることが知られています。
ヒトは最低250mlの真水を飲まないと、生き続けることはできません。海洋を漂流する危険が予測される場合は、海水から一日当たり250ml以上の真水ができる蒸留装置を用意してください。魚を捕まえて、その体液を飲むことはできますが、漂流中に魚を捕まえることは、容易ではありません。逆に、魚に食べられてしまう危険性のほうが大きいのです。
D 海水・大気の大循環-2
[組成を中心に]
Q40 地球の水資源は有限ですか無限ですか?
A40 地球上の水の97%は海洋に存在している。生命体が利用できる水は主に河川水であるが、これは、地球上に存在する水の1万分の1%にすぎない。また、降水量は地域・季節により変動するので常に一定の量を確保することは難しい。しかし、地球上の水は太陽のエネルギーにより蒸発し、大気中で凝結して雨や雪となって、地球表面にもどってくる。この期間はおよそ10日である。すなわち、水は地球上をサイクルしている。このために水はリサイクル物質として考えれば無限に繰り返し利用できることになる。しかし、タイムスケールを狂わして自然の循環より早く利用しすぎると回復が間に合わず不足してしまう。また、水を汚染してしまうと利用が限定され、飲み水に使えなくなる。そういう意味で人間の利用方法が悪ければ有限な資源となる。人間活動と関係なく、自然でサイクルしている水資源を有効に利用しなければならない。