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しかし、日本の援助が終了し、フィリピンの政府に引き継いだら予算不足で立ち消えになったと聞き、自立して続けることのできる援助形態を考えなければならないことを学んだ。例えばレンタルにして、書き込むところだけ貼りかえるようにしたら続いたのではないだろうかなどと考えた。

・援助の意義

村の子供の栄養状態の改善の為にfeeding programを行うNGOがあった。JICAはある地域で母子保健のプロジェクトを行っていた。これらの効果は社会全体からみれば小さいかもしれない。多くの健康上の問題はその根本にある貧困とか社会システムとかを変えないと劇的な解決を得ることは難しい。だから援助は無意味だと考えることもできるであろう。しかし、まず手の届くところで出来ることからやろうという姿勢は何もしないことに比べ大切だし尊い。一人でも救われる人がいるのだ。一方で問題を根本から解決するには経済など様々な分野の人々と連携することが重要であることを感じた。

・日本の学ぶべき点

Family medicineが一つの専門となっていることは、PHCを行き渡らせる上で重要である。また、referral systemが構築されている点は医療の効率から考えて学ぶべきところがあると思った。

<結び>

フィリピンに行く前は先進国と途上国との医療格差しか考えていなかったが、フィリピン大学の病院で、治療費が無料と有料とでの病棟の違いを見て、格差は国の中でも大きいことに驚いた。そして、当初の疑問はさらに大きくなってしまった。日本で日常目にする高度な医療に対し、どこか申し訳ないような思いを抱きつづけている。しかし、医療は進歩していて後戻りさせることは出来ないし、病人がいて治す手立てがあったなら、それを使うのは当然である。しかし、一人の成人病の治療費にくらべ、一人に対する感染症予防にかかる費用は格段に小さい。これは予防医学や衛生事業がそれ自身の意義だけでなく、cost・effectivenessという面においても重要なことを示していると思う。治療においてもcostを考えると、WHOのdrug policyは日本も見習ったほうが良いと思うし、医療従事者は最低限のcostで最大の効果を引き出す方策を常に考える責務があると思う。

食糧も、医療も、薬も、金のあるところには溢れていて、貧しいところでは不足している。資本主義が主流で、また全ての人が平等になどなりえない以上、これは仕方のないことなのかもしれない。しかし、栄養や健康は人間の最も基本的な欲求であり、よりよく生きるための前提となるものだと思うので、私は限りある資源であるならば極力平等に分配して、“全ての人に健康を”というアルマータ宣言が2000年までというわけにはいかなかったが、そう遠くない未来に現実のものとなることを願って止まない。そしてその為に自分も何か役に立てたらいいと思う。

今回の旅で、これから、幅広い知識を得たり、思考力をつけたり、コミュニケーション能力を高めたりする努力をしなければならないことが分かった。そして共に学び、成長していくことの出来る多くの友人という、かけがえのない財産を得ることが出来た。

この機会を提供してくださった笹川記念保健協力財団と、このプログラムに関わってくださった全ての方々に厚く御礼申し上げます。

 

 

 

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