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フィリピンで30年以上にわたり寄生虫対策に従事された安羅岡先生が、マニラで私たちに下のような言葉を語ってくれました。

「今までの日本の援助は、「カね、キかい、クるま」だったが、これからの援助は、「ケんこう、コころざし」でないといけない」

残念ながら先生は先月、癌のために亡くなられましたが、私も医者となって少しでもこのような援助ができればと思います。 (吉國)

 

安羅岡先生の話のここそこにも国の誇り、自分の国がどういう国であるかを自覚することの大切さ、また自分の立つ場所を失うことの怖さを感じました。フィリピンの研究所では、欧米並みのDNAの研究をしている。しかし停電が多く、水も空気も汚く、この暑い気候の中ではうまくいくはずがない。フィリピンに最も必要とされていて、しかもフィリピンならではの研究ができる分野は、寄生虫や感染症などたくさんあるのに、自分のことを分かっていなくて、ただ西洋にあこがれてばかりの人達にはそういうことが見えてこないようだ。という話を聞いた時、自分のこと、自分の国のことを的確に把握できていないと、研究の方向まで間違った方向に進んでしまうんだ。と衝撃を受けました。

安羅岡先生は、日本人は欧米にコンプレックスを持っている。そして、その反面アジアの人々に対して逆コンプレックスとも思える優越感を持っていることが多い。と指摘されました。そういう感情を持っている人はアジアの中で仕事するうちに態度や、言葉の中でそういうことがぽろりと出てしまう。そういう人とアジアで仕事をすることはできない。と言われました。私はドキリとしました。私の中にもそういう部分が少なからずあると感じたからです。 (里野)

 

※安羅岡一男先生は、笹川記念保健協力財団寄生虫症対策専門家として永年にわたりフィリピン・カンボジアをはじめとした日本住血虫症対策の現地技術協力に尽力されました。本フェローシップ実施期間中に技術協力のためフィリピンに来られていたので、安羅岡先生より国際保健協力、特に寄生虫症対策についての講義をいただくことができました。残念ながら安羅岡先生は帰国後病のため亡くなられました。

 

 

 

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