2. 燃費改善技術の研究
2.1 高効率圧縮機の研究
2.1.1 軸流V型圧縮機の研究
(課題)
軸流V型圧縮機においては目標効率の高さや実機試験における詳細計測の困難さを考慮すると、要素試験を行い、性能を確認しておく必要がある。このため平成9、10年度に供試体の設計・製作、平成11、12年度に軸流V型単体要素試験およびV型圧縮機組み合せ(軸流V型+遠心)要素試験を実施した。
(供試体の設計・製作、試験結果)
a) 軸流V型圧縮機の設計
高効率を達成すること、また遠心圧縮機と接続するために軸流段出口径を大きくできないことから、軸流圧縮機の段数は4段とした。部分負荷性能の向上と起動時の旋回失速回避を狙い、入口案内翼(IGV)から第3段静翼までの静翼は、取付角可変とするVSV構造を採用した。また、第4段静翼は、固定翼とし遠心圧縮機の入口条件に合わせるため、旋回角度を20度となるよう設計した。
設計した圧縮機翼は、粘性を考慮した3次元流れ解析を行い、問題のないことを確認した。一例として、図2.1.1-1に第1段動翼の3次元流れ解析結果を示す。ハブからチップまでの全範囲に渡り、衝撃波及び剥離が無く流れも設計通りであり、翼列設計が適切であることを確認した。
b) 吸い込みケーシングの要素試験
軸流圧縮機入口流れの均一化と上流側圧力損失の低減等、圧縮機入口条件に適合した吸い込みケーシングを実現する必要がある。そこで、流れ解析によりケーシング形状を評価・検討し、選定した形状の吸い込みケーシングモデルを製作し、空力性能確認試験を実施した。吸い込みケーシングモデルを図2.1.1-2に示す。この結果、採用した吸い込みケーシングにおいて、剥離等の問題となる流れが発生しないこと、IGV出口において、ほぼ軸流圧縮機入口条件である一様な流れが実現できることが確認された。
c) 軸流V型圧縮機の供試体の設計・製作および要素試験
上記の諸検討をもとに、軸流V型圧縮機要素試験の供試体を設計・製作した。軸流V型圧縮機要素試験の供試体断面図を図2.1.1-3に、供試体の写真を図2.1.1-4に示す。軸流圧縮機出口状態の詳細計測のため、軸流圧縮機出口部で、3孔ヨーメータのトラバース計測が可能な構造とした。本供試体により、性能の確認および出口条件の確認を実施した。出口条件確認試験結果の一例として、軸流圧縮機出口気流旋回角度のトラバース計測結果を図2.1.1-5に示す。流路壁面近傍では若干のズレがあるものの、平均径ではおよそ設計角度の20度の気流角度となっており、遠心圧縮機入口条件を概ね満足することが確認された。この軸流単体要素試験の試験結果を設計にフィードバックし改良を重ね、V型圧縮機組み合せ試験に反映した。
d) V型圧縮機の組合せ試験
V型圧縮機組み合せ(軸流V型+遠心)要素試験の供試体断面図を図2.1.1-6に、供試体の写真を図2.1.1-7に示す。図2.1.1-8および表2.1.1-1に、V型圧縮機組み合せ(軸流V型+遠心)要素試験の結果を示す。空気流量は仕様値とほぼ一致、V型圧縮機組み合せ全体効率および軸流V型単体効率はともに仕様値をほぼ達成、サージマージンについても問題無いレベルであることが確認された。