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8月12日(土) 地域伝統芸能公演 常磐公園特設舞台

司会 吉川精一(アナウンサー)

安井まみ子(アナウンサー)

 

好天に恵まれた3日目は土曜日とあって人出も多く、開演時間には会場後方に広がる芝生にも多くの観客が集まっていた。

この日のオープニングは北海道東川町の羽衣太鼓(はごろもだいこ)である。リズミカルな太鼓の響きは会場の雰囲気を盛り上げていった。各地で祖先より伝承されている伝統芸能としてはまず島根県浜田市の石見神楽(いわみかぐら)が登場した。勇壮な舞と豪華絢爛の衣裳に観客の目は引き付けられていた。北海道松前町の江良杵振舞(えらきねふりまい)は、お囃子と「ヤレヤレ、ソラヤレ」の掛け声のもとで、子供たちが一生懸命杵を振り回しながら舞っていた。沖縄県那覇市の琉球民謡(りゅうきゅうみんよう)・舞踊(ぶよう)は今回のフェスティバルでは2度目の登場で、今回も観客はリズムに乗り、体を揺らしながら楽しんでいた。外国からは隣国、大韓民国安東(アンドン)市からの仮面劇が登場した。日本では見慣れない面妖な面を着けた人たちが、ドラやラッパや太鼓などの音楽に合わせ、台詞の掛合いをしたり踊ったりする舞台に、観客は珍しそうに見入っていた。

開拓者により伝承された伝統芸能では、北海道に伝わった駒踊りのルーツの一つである青森県十和田市の洞内南部駒踊り(ほらないなんぶこまおどり)、つづいて北海道に伝わった白糠町の白糠駒踊り(しらぬかこまおどり)が登場した。両方とも馬の張形を腰に着けて騎乗の姿で踊り、それぞれ囃子も踊り方も違うが、馬が元気に躍動しているような勇壮な踊りを披露した。次の北海道三石町からの三石町歌笛越前踊り(みついしちょううたぶええちぜんおどり)は福井県からの開拓者により伝承されてきたものだが、故郷の福井県ではもう踊られておらず、北海道にのみ伝承されているという貴重なものである。北海道旭川市の雨紛囃子(うぶんばやし)と埼玉県新座市の大和田囃子(おおわだばやし)は兄弟と言えよう。昭和20年に旭川市に移住した開拓団のなかに大和田囃子の指導者がおり、旭川市で雨紛囃子として伝承してきたものである。江戸の神田囃子系で、軽快なテンポでオカメ・ヒョットコや獅子の舞加わった。それぞれの演技の後の共演では、出演者も初めての共演ということで感激しており、観客からは大きな拍手が沸いた。辺りはすっかり暗くなり、森の木々のシルエットが映える舞台で、北海道網走市のオロチョンの火祭りが登場した。燃え上がる焚き火の炎の周りを、北方民族の衣裳を着た人々が踊る様子は幻想的なものであった。

舞台の演技は一旦中断し、地域伝統芸能全国フェスティバルの幟旗の伝達式を行った。時期開催地への思いを込めて北海道経済部長から実行委員長へ、そして静岡県生活文化部長へと幟旗が手渡されると、静岡県新居町の手筒花火(てづつはなび)が登場した。火柱の噴き上がる筒を脇に抱え、降りしきる火の粉の中を乱舞する勇姿に、観客からウオーという驚きの声が上がった。

手筒花火の興奮がまだ醒めやらぬ中、グランドフィナーレを迎えた。この日の出演者全員が舞台上に勢揃いすると、旭川市内昭和通りのパレードに参加していた団体がこの会場に合流してきた。鬼剣舞(おにけんばい)が先頭で、香川県香南町の冠纓(かんえい)の獅子、阿波(あわ)踊り、長崎県長崎市の長崎籠(じゃ)踊り、秋田竿燈(かんとう)、北海道旭川市の永山屯田(ながやまとんでん)まつり、北海道斜里町のしれとこ斜里(しゃり)ねぷたと続き、それぞれ演技をしながら入場し、舞台の周りに終結した。最後は青森県青森市の青森ねぶたである。大燈篭の周りでハネトたちが「ラッセーラ、ラッセーラ」と掛け声をかけながら踊り、会場全体が興奮の渦の中、三日間のフェスティバルの幕を閉じた。

 

 

 

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