メンタルヘルス事例集
事例1
試し出勤の後、通常勤務に復することができた事例
―乗り物・混雑恐怖に対して出勤時間を遅らせる試み
28歳、男、公務員、未婚
大学卒、公務員試験に合格して某省庁入省
自宅から電車で通勤時間約40分、特に問題なく勤務していました。
2年ほど前、朝の通勤ラッシュ時、電車の中で急に気分が悪くなり、めまい、動悸、冷汗などの症状が現れました。やっとのこと職場にたどり着き、診療所で診察を受けました。医師は、そこでできる検査などをして診察をしました。特別な異常も認められないし、疲れによる自律神経からきているようだから、二、三日休んで様子を見たらと勧められました。三日ほど自宅で休養、特に具合も悪くないので出勤したところ、再び電車の中で同様の症状が起こり、以後、混雑した電車に乗るとまたなるのではないかという不安で、出勤することができなくなりました。
診療所の医師の勧めで、精神科医を受診し、不安神経症と診断され、精神安定剤の投与を受け、二週間の休養をするようにと言われ、その指示に従いました。しかし、休養後も電車に乗るのが怖くて出勤することできず、再度相談の上、少し長期に休養することになりました。実家のある九州に戻り、二ヶ月間体力を維持するための運動や、精神安定剤の服用を続け、まず大丈夫だろうということで帰京し、復職することにしました。
ところが、第一日目に前より程度は軽いものの、同じような症状が出現したため、また自信をなくしてしまいました。
相談を受けた精神科医は、一般健康状態に問題はなく、日常生活も普通で、仕事ができない状態とは考えられない。ただ、混雑した電車に乗ることの不安と恐怖だけが問題と判断し、職場と話し合いました。前例のないことでしたが、試し出勤として出勤時間を午前10時に、退勤時間を午後3時として、混雑のない時間帯に通勤させてみることにしました。