はじめに
どこの職場であっても、これは公務員であると民間企業であるかを問わず、また仕事の内容にかかわらず、そこで働いている人たちの健康を維持するように努めることは、職場にとって極めて大切なことであるのはいうまでもありません。
職場の福利厚生の大きな部分をこれが占めるといってもいい過ぎではないと思われます。もちろん、職員の持ち家への援助、保養所の整備、レクリエーションなどが、福利厚生の中に含まれるわけですが、これらも間接的には健康維持と関係があるといえましょう。
健康ということについては、改めてWHOの健康の定義というのを持ち出さなくても、このごろはトータルヘルスという考え方が根づいています。
一応説明のために表1を挙げておきますが、結局は身体の健康、心の健康というように別々のものではなくて、社会的にもいい状態を含めてトータルなものだと考えてください。ですから、身体は健康だが心は、心は大丈夫だけれど身体の方はということはないということになります。社会的に良い状態というのは精神健康と大きな関係があり、様々な問題を含んでいますので、後の方で述べることを踏まえて理解してください。
(表1)
健康とは何か
健康(WHOの定義)
身体的に完全によい状態
(A State of complete Well-being)
精神的に完全によい状態
社会的に完全によい状態
職場での身体健康面については、定期健康診断を積極的に勧めるとか、生活習慣病への理解を深めさせるとか、一方で精神健康とも大きな関係があるわけですが、労働時間の問題とか、休暇を十分にとれる体制に配慮するとか、いろいろな取り組みがなされているようです。
一方で精神健康の面、いわゆる職場におけるメンタルヘルスは、やや後れを取っているという声があり、ここ数年それに対しても各方面で、いろいろな対策がとられてきています。
健康の維持は、当然のことながら、一人一人の日ごろの心掛けが大切なわけですが、一方で、職場としてそれをサポートする体制を十分に考える必要があります。
第3巻では、心の健康の維持のために、職場としてどう対応していくべきなのかについて、メンタルヘルスに関連したいくつかの問題や事例を中心に考えてみたいと思います。