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―実践報告―

私達仁寿太鼓は、一昨年度、結成20周年を迎えた掛合太鼓を基に、全町あげて太鼓が盛んな中で、平成元年12月地域との交流、利用者、支援者とのコミュニケーションを深めようと仁寿太鼓として発足致しました。

発足当時は一級指導員の景山道隆先生の指導を受け、基礎練習から行ってきました。施設内での初演奏を踏まえ、地元の小学校の交流演奏会などで発表の場を広げて行きました。

そして平成3年、東京で行われた『愛のステージ』の芸能部門に出演し、初めての県外公演を果たしました。

これを期に、県内においては徐々に名前が知られるようになりました。平成4年に島根県太鼓連盟に加盟し、尚一層活動の中身が濃いものとなりました。

日々の施設生活においては、作業を中心とした中で週2回の練習、練習については集団活動、故に個々の鍛練とそれを伴って全体でのまとまりへと結びつけていく厳しいものです。自分自身の中でマイナスを引き起こす情緒不安定によるストレスなど全てが太鼓表現に表れたり、また逆にプラス志向で太鼓に向かえるときには豊かな表現力を持って打ち込めることを日々の練習をもって実感しています。

又、嫌なことがあるとすぐに逃げ出したくなったり、人間関係をうまく保てないなど、その場から逃避したくなる人、全てに於いて思うようにいかなければすぐに自分のカラに閉じこもってしまう人、様々な集まりの中で、当然人に合わせてうまくやっていこうというのは容易なことではないながらも、練習の間は少しでも長くこの集まりの中から逃げ出さないでがんばっていこう、又少しでも自分をアピールしてみたい等と、12年間のプロセスを再度見直しながら積み重ねたものを土台とし、少しづつではありながらもメンバー各々が変わりつつある時期にあります。

それらを決定的にしたのは、一昨年度、昨年度に続いて開催された日本太鼓全国障害者大会においての出演だったと思います。出演者がみんな同じ立場という観点から、太鼓の演奏は『自分にできないことはない、限りない可能性を信じてやれるところまで努力してみよう』という意識を高めています。

又、昨年の第8回全国知的障害者スポーツ大会(ゆうあいピック島根大会)においての出演も、観客と一休となった発表において大変満足のできるものとして結果を生み出すことができました。

演奏会で一人一人が各々のレベルを達成できるよう日々目標を掲げ、意欲を高めながら練習に励んでいます。しかしながら現実は平均年齢が40才を越え、だんだんと体力的に厳しい状況は避けて通れない時期でもあります。そのような中で、いつも心と身体が反比例しながらも、個々に根づいた熱意は常に忘れないように心がけたいと思います。

これといった成功例としては言葉としてはっきり掲げることができないものの、年間20公演近くの演奏において確実に変わりつつある姿があるということは、支援者はもとより利用者の方各々が実感しています。

今回の演奏では全員参加できなかったものの、参加できなかったメンバーの方の力もあわせ全力で演奏に打ち込みたいと思います。

 

 

 

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